「『沐浴剤』作り」 01/08/06

すでにジュウヤク(ドクダミ)やヨモギ、スギナやトウキ、レモンバームなどは干し上がりました。今はゲンノショウコやミントなどを干している最中です。夏の終わりに採取するレモングラスは、今が育ち盛りです。例年、沐浴剤を作るのは私の担当です。

 今年、はじめて「キハダ」の木の葉を加えてみようと思っています。数年前に苗を2本植えましたが、今や背丈が数メートルにもなって枝が張り、イチジクの日陰になるまでになりました。そこで枝打ちをしたわけです。キハダは、皮を利尿剤などに使いますが、葉も干して煎じて飲めば健康増進によいと聴いています。だから、沐浴剤に、と考えたわけです。キハダという名は、木の肌が薬になるから「木肌」だろうと思っていましたが、黄色い肌だから「黄肌」になったのではないか、と考えるようになりました。太い枝を切って初めて内皮がとても綺麗な黄色だと知りました。

 わが家では、ミント類は4種類自生しています。オオバコも使います。今年からウコンも植えましたから、来年からはこれも加えることになりそうです。

 どうして私は沐浴剤作りを担当するのか。それは、今から半世紀余り前の体験にさかのぼります。病身の父を都会に残し、京都の叔母をたよって疎開しました。姉は15歳になっていましたが私は5つで弟は2つでした。特に私や弟が熱を出したり怪我をすると母はうろたえました。戦時中のことですから、思ったように薬が手に入らなかったのです。ブヨに初めて咬まれたときは赤く晴れ上がりました。両親は咬まれたことがなかったようですから免疫がなかったのでしょう。栄養不足のせいもあったことでしょう。化膿した跡は、今も天然痘にやられた時のような跡が残っています。

 叔母は父の姉だし、高等師範の教師だった人だから、母にとってはとても煙たい存在であったに違いありません。しかし、私たち兄弟が怪我や病気になった時は叔母にすぐさま相談していました。ある時は、ジュウヤクをとってきてすり鉢ですり、ガーゼで絞って汁をとり、その汁でメリケン粉をねって団子をつくり、幹部にあてて包帯で巻く。ある時は、干したあったゲンノショウコをもらい、土瓶で1日かけて煎じて飲む。こうした指示を母は真剣な目をして仰ぎ、従っていました。いつも見事に癒され、私は薬効に感心しましたが、人間の智慧にも驚きました。人の絆は心から直してくれそうに思ったものです。

 もちろん、こうした薬草などの成分を、科学的に精製したり合成したりして今の薬は出来ているのでしょうが、少し心配です。多分、植物にはさまざまな成分が含まれており、複数の成分がお互いに関係し合って効いているのだと思うからです。その都合のよい成分だけを抽出したり合成したりして用いたら、アンバランスなことが生じるのではないでしょうか。また、母が「治ってほしい」と祈るような気持ちを込めて作っていたあの気迫を忘れられません。今は亡き叔母や母を思い出します。母が摘み、叔母が煎じ、私が飲んだ草の根や種の末裔を、私は今、摘んでいるのかもしれません。

 それはともかく、薬の成分などの吸収率は、肌が一番で、飲んで胃腸を通じるよりも静脈注射よりもよいと聴かされ、驚いたことがあります。

 妻は、わが家の沐浴剤を使った時は、浴槽の回りに湯垢が着かないので不思議がっています。


キハダの葉。今回初めて用います。効果のほどは,まだ分かりません。
木の皮が利尿剤として重宝されています。
葉は干して煎じて飲むと健康増進に役立つと聞いています。

上はゲンノショウコ下はジュウヤク。
ゲンノショウコは干して煎じて飲めば、下痢には抜群の効能があり、現の証拠と名付けられたぐらい。
ジュウヤク(ドクダミ)は、様々な使い方があり”十役”と呼ばれるぐらい。

いく種類かのミントやトウキを干しているところ。
薬効もさることながら芳香を良くする上で欠かせない存在。

干した後、刻んでさらに干しているところ。すでに八種類の薬草が混ざっている。
ここにキハダの木の葉や、秋に採るレモングラスなどが加わってアイトワの沐浴剤が完成する。我が家では、袋に入れて湯船に放り込んで使っている。二日目は、湯を半分捨て新しい湯を足す。
冬などは三日目も同じ事を繰り返す。薬効も良く出るし、湯も柔らかくなる。人数の多く毎回湯を変えざるをえない場合は、朝タライに水を張り沐浴剤を入れた袋を入れ天日で夕刻までじっくり薬効を出させ、湯船に入れて風呂をたてると良い。




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