「猪を逃がした」01/08/27

どうにも怪しい。庭が荒されている。かといって猪ではないだろう。土のほじくり返し方がチャチだ。猪なら、小型のブルトーザーが入ったような掘り返し方をする。こんな自問自答を、モンゴル旅行から帰ってきた先週にさせられました。庭のあちこちに土をせせったような跡があったのです。

 かつてわが家の庭は猪によく襲われました。有機栽培の畑ですからミミズもいるし腐葉土の山にはカブトムシの幼虫もたくさんいます。夏の畑には、サツマイモやトウモロコシが植わっているし、猪が大好きなものがイッパイある。だから、2年前に、猪の進入を防ぐネットを庭の周りに張りめぐらす対策を打ちました。それは、友人に紹介された会社から講演を依頼されたのをいいことに、無償で張っていただくことになったわけです。静岡に本社があるネットを生産販売する日本一の会社でした。夕食時に話題が広がり、「猪を防除するネットもありますよ」と聞き、甘えることになったわけです。

 だから、2年前から庭には猪の大好物のユリの球根も随分植え込んできました。もう襲われることがない、と安心したからです。わが家の庭は一度苗を植えるなり種をまくなりすれば後は自生してくれる植物を尊重しています。ユリや水仙はとてもわが家の庭の土が好きなようです。そのユリがやられていました。その目で点検してみると、カブトムシの幼虫を探した痕跡、ミミズを捜し出した跡などもありました。

 進入した所はまだ分かっていませんが、逃げ口は歴然としていました。
 ネットは70〜80センチメートルの高さですからその気になれば猪が飛び越せるはずです。また、土地は高低差もあるし隣地の垣根との都合もありますから、猫の子一匹入らないようにと言うわけにはいきません。第一、それでは住み着いているコジュケイやイタチを驚かせでしょう。現実に、ネコはよく入ってきますし、タヌキも入ってきています。だから、小振りの猪が隙間を見つけて入り込んだのでしょう。そして出る段になってあわ て、ネットに突撃し、もがきにもがいて抜け出したに違いありません。直径25センチメートルほどの穴が開いていました。

 その穴に、太い針金で作った投げ環のような罠を仕掛けました。もし次にそこから入ろうものなら、首がしまり、もがかすに違いありません。そうなれば犬が吠え、私が出ていって一撃を加える、という段取りにしたわけです。だが、残念ながら痕跡だけ残して逃げられました。針金が首か胴を締め、足掻かせたことは確かですが、もぬけのカラでした。犬が吠えなかったのです。犬が吠えてくれていたら飛び出しており、丸太ん棒で叩きのめし、丸焼きにでもしていたことでしょう。私は残念ですが、妻はそれでよかったと胸をなで下ろしています。でも、これで当分は襲われないことでしょう。

 かつてネットを張っていなかった頃、気配を感じてそっと近づき、石を投げて脅したことがあります。その時は、退路を絶たれたようなことになってよほど驚いたのでしょう。隣地の小倉池に飛び込み、激しい水音をたてて退散したことがあります。その時は、その後2年ほど襲われませんでした。

 幸いな事に、忍び込んだのは若い猪で、知識の蓄積に欠けていたのでしょう。畑のトウモロコシやサツマイモには気付かずに自然薯やミミズなどを荒しただけで終わりました。
もちろん、先週は未花夫妻が泊まりにきました。これを幸いとし、薪積みをすることにしました。この春に櫟(クヌギ)林の大幅な手入れをしたのですが、その時に出来た薪の積み上げです。

小振りのイノシシが破ったネット。その穴に針金の罠をしかけ直してある。ビニールが破れて銅線が剥き出ている部分は、前回イノシシが引っかかって暴れたときのできたものです。
その後、イノシシの被害にあっていません。
不要になった木と落ち葉を積み上げた堆肥の山がイノシシに荒らされました。カブトムシの幼虫を狙ったものです。
不要になった木とは、薪にむかない木やほかに使い道が見つからなかった余分の木のことです。



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