「相互扶助の家屋」01/12/17

 
 今年はカメムシが異常発生しました。これはアイトワの庭に限ったことではないようですから、冬は雪が深くなりそうです。すでに暖房用の薪は多めにつくってあります。庭木を雪から守る用意もしようと思っています。北国の友はどうしているのかな。

 アイトワでは、生活の営みを守り、自己責任の下に自己完結する生き方を目指しています。自分らしく生きたいからです。自分らしい生き方には自分らしい空間が必要です。庭を開放したのは、こうした生き方の楽しさや生活空間のあり方を多くの人に提案したかったからです。半地下構造の2層の建物を完成させた1986年の春、桜が満開の日からアイトワという看板を揚げ、開放しました。半地下構造にしたのは、井戸のように冬は温か く夏は涼しくするためですが、この省エネの狙いは見事に的中しました。半地下構造とはどういう意味か。それはサンクン・ガーデン(沈んだ庭)と呼ぶ庭を、地階の人形工房と喫茶店の前に設け、地階の閉塞感をなくしているからです。サンクン・ガーデンのレベルから地階を見た人は、皆さん1階だと思っておられます。

 その後、人形工房が手狭になり、新たな棟を作りました。それも半地下構造の2層で、地階に人形工房を、1階に人形展示室を設けました。この別棟はサンクン・ガーデンのレベルから更に40センチメートルも掘り下げており、人形工房には縦穴式住居のように階段を降りて入ります。しかも床は板張りです。この縦穴式住居の方式は2棟目だから出来たことです。1棟目を作ったおかげで、地下構造の湿気の問題がなんとか克服出来ると分かったからです。新しい棟には天井窓が2つあります。人形展示室の採光用と、地階の閉塞感も減らしたくて地階と1階をつなぐ階段部分にも設けました。天井窓も省エネの工夫ですが自然光は時の移ろいを肌で感じられます。この2棟は鉄筋コンクリート作りの地階の上に木造の1階を乗せた構造ですが、新しい人形工房の屋根はテラスになっています。このコンクリートのテラスは、夏は焼けて58度に、冬は凍てついて氷点下6度にもなり地階に悪影響を及ぼすことが分かりました。そこで、土を乗せて芝を張り、草屋根にしました。この効果は抜群で、夏は28度、冬は6度の範囲内に納めることができました。

 この2棟の建物の他に、庭には私たち夫婦の居宅と両親が住んでいた母家があります。これらの建物の屋根には草屋根をはじめ、11ヵ所の天井窓、太陽温水器、薪ストーブの煙突、民間用としては関西初のソーラー発電機などが乗っています。天井窓の1つは広縁に設けており、南面に植えた落葉樹との相乗効果で夏は涼しい木陰のように、冬は温室のようにしています。床下の空気を足元に取り込み、暑さや寒さを調節する工夫もあります。庭には他に二つの小屋と一棟の温室がありますが、居宅部分は開放していません。

 こうした大小7つの建物が点在する庭には、40年余にわたって苗から育てた樹木が燃料、果実、漢方薬、木陰、芳香、生け垣など個別の役割を担いながら、200種1000本がそろって気温の調節や空気の浄化作業などに携わっています。こうした樹木や家屋は、家族が助け合わなくてはうまく機能しません。両親はともにしっかりした意識を保ったままそれなりの役割を担い、享年93歳で、自分の布団で私たち夫婦に見守られながら、穏やかに死んで行きました。人生がやり直せるものなら、そして妻と巡りあえて助け合えるなら、生まれ直し、こうした工夫を総合的かつ計画的に採り入れたコンパクトな建物を作って住みたいなあと思います。そんなことを考えながら、昼間に取っておいた渋柿で、お正月の御鏡用の串柿を夜なべ仕事にしました。

客間の側室に設けたトップライト(天井窓)。お客さんは、障子越しに朝の明るさが感じられ、自然の目覚めを楽しんでおられるようです。

地階と一階をつなぐ階段の上に設けた三角形のトップライト。
地階の閉塞感を取り除いてくれます。先に建てた棟の屋根に設けたソーラー発電機の端の方が写っています。


地階の屋根がテラスになっています。そこに土を入れ草を植え草屋根にしました。地階の人形工房はサンクンガーデンから自然の光を採っています。出窓のある一階が人形展示室です。
左下に二重に積んで寒い冬に備えている暖房用の薪が見えます。
その奥の方に温室が見えています。

今、シイタケの冬子(ふゆご)のシーズンです。春にもう一度、春子(はるご)が採れます。今年は数が少なかったのですが、こんなに大きいのも採れました。
野小屋の近くに小鳥の糞から芽生えたハリトオシの木があります。
小さな木ですが、すでに実を付けるようになりました。
この近くにシイタケのほだ木を立てています。
渋柿も大豊作でしたが、私たちが忙しいために六十個だけ串柿にしました。母がいたら少なくとも2〜300個は作くれていたことでしょう。実は二人で採って竹串は私が作り妻が皮をむいて私が竹串に通して干しました。
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