次回が楽しみ  02/03/04


 先週、フィリピンの小島の主をご夫妻でお迎えすることになっていました。なんと、ご主人が東京に着いてから下痢でダウン。万一のことを考えて、出直してもらうことになりました。だが、ご夫妻との歓談プランの火着け人には予定通り東京から訪ねてもらい、予約済の訪問先と仕入れ済の食材の消化に貢献願いました。

 昼は、我が家の庭で湯豆腐です。好天に恵まれましたし、「アイトワ塾」の塾生が一人飛び入りで加わったこともあり、けっこう楽しい午餐となりました。灰の中に、鳴門金時という亡き母の里のサツマイモを埋めました。青竹で作ったトックリで京都の佃煮屋「津乃吉」の主人持参の酒を温め、青竹のぐい飲みで酌み交わしながら談論風発です。レンガの炉で炭火焼きした塾生持参の
干物。庭のダイダイを絞った湯豆腐のツユ。薄切りした畑の大根を沢山入れた妻の即興の汁。時間はゆったりと流れました。途中で、火付け人が闘病中のフィリピンからのご夫妻に電話を入れ、青空の下、焚き火を囲んだパーティの様子を長々と実況放送。病状を悪化させたに違いありません。

 「アッ、サツマイモ」、と誰かさんが気付いていなければ、危ないところでした。もう少しで炭になっていたところです。オニギリの準備で火の側を離れていた妻は、半分炭になったのを食べながら、「高いオイモですからね」とふくれたこと。最後は、妻の手前味噌をつかった朴葉味噌と焼きオニギリで仕上げ。京都の二人を見送り、残ったメンバーで後片付けをしてから室内に移動しました。

 夕食に、立派なカキを焼き、庭のホースラディッシュを使ったソースで食べました。カキは、妻の友人から頂いたものですが、なんとも美味しかった。あとは妻のお惣菜と巻き寿司でした。やすむ前に、わが家流の沐浴剤をいれた風呂をたてました。その年によって変わる調合ですが、この度は10種余の庭で採れた薬草が入っています。

 朝食に初物のスグキの漬けもの。自家製ですが、無事に醗酵していたのでヤレヤレ。

 2日目も燃え大団円となりました。津乃吉の主人の運転で滋賀県めざして出立。途中で大原の宝泉院に立ち寄って尺八や住職の声明に聞き入ったり、道中で鯖の熟鮨で一献傾けたり、温泉につかったり、昼に美味しい蕎麦を食べたり、酒造蔵を訪ねて搾りたてを試したり、夜は琵琶湖の幸と鴨を食べさせてくれる旅籠でだべったり。酒は、見学した酒造蔵のヤマハイ仕込みを持ち込みましたから格別。ヤマハイ仕込みは古来の作り方で、自然界の酵母を呼び込む醸造だけに厳しい温度管理や激しい労働が付き物。人工酵母と違って仕上げるのに何倍もの時間と労力を要します。かつてビジネス界にいた私にすれば、良いことなしの方式に見えます。偶然性に賭け、何倍もの時間をかけて資金を寝かし、余分の賃金も必要のはず。だが、この酒造蔵のご主人はヤマハイ仕込みに傾注です。酒の賞味では相当なレベルの友人と同行してよかった。友人は、「重いですからお送りしますよ」といわれながら、「それはそれで」と持ち帰る分を買い込んでいました。

この燃えた集いは一冊の本が縁でした。火着け人の佐田智子さんが昨年平凡社から出した『季節の思想人』という著作に、私たち夫婦が錚々たる人たちに混じって収録されたのです。もっとも、他の方々は単独のご登場ですが、私たちは半人前が二人で一人前の扱いです。佐田さんが、別の企画で取り上げたご夫妻にこの著作を贈られたのがきっかけでした。今回は、受話器を通した声の対面で終わりましたが、次回が楽しみです。なお、心配していた病気ではなかったとの知らせが入っています。



火種となった『季節の思想人』佐田智子著・平凡社刊永六助さんの推薦文「佐田さんにインタービューされて、初めて自分を発見した。彼女はインタビューの達人です」のごとく、他の方々のインタビューから時間のふくらみや意志の奥行きまで感じさせる立体的な
文章とはこういうものか、と思い知らされました。

「津乃吉」の主、吉田さんは知る人ぞ知る尺八の名手です。その日の参観者は、襟をただして聞き入り、拍手をおくりました。私たち夫婦は、知る人ぞ知る津乃吉の佃煮に魅かれたのがきっかけで吉田さんを知り、その尺八に触れることになりました。


 文久2年創業の上原酒造は、五百石の小さな蔵だけに米から地元産の酒米にこだわる。
但馬杜氏は田植えから労をいとわず、蔵内に湧き出る比良山系の伏流水を使ったヤマハイ(山廃)仕込みと天秤搾りに精を出す。「苦労させても悲しますことはしない」とやる気の七代目に社長は目を細める。

当日、妻の個展の案内状が出来てきました。
それを取りに立ちよったために、塾生の後藤さんはパーティに巻き込まれたわけです。
妻の人形は20日から1週間東京に出掛け、銀座松屋の美術画廊でデビューします。関東の方は会いに行ってやってください。
詳しくは、http://www2.plala.or.jp/Machami/ aightowa/tenji.htm をご覧下さい。

 デジカメを常に携帯している後藤さんに、撮影班を引き受けてもらいました。わが家のすべての犬は彼に手なずけられてきたのですが、持参の干物を焼いて犬たちにも分け隔てなく配ってあげていました。
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