連休のしめくくり    02/05/20                                              

 久しぶりで大仏を見ました。「東大寺のすべて」という催しがある、「日光、月光の像が間近」で見られる、と東京からの二人の友に奈良行きを誘われました。私たち夫婦にとって、久し振りの連休のお出掛けです。明朝「早く家を出て、博物館が開く前に着くようにしよう」と話し合い、庭の食材や薬草を用いた料理や風呂のあとは早めに寝ることにしました。友の一人が土産にと持参した大量の天然ジュンサイが酢の物や澄まし汁となり、贅沢な夕餉となりました。生涯で一度あれば幸せな豊富さでした。

 朝食は道中でとる予定でしたが、妻が早めに起きだしてサンドウィッチを用意し、風徐室に並べました。これが風徐室の、いわばこけら落しでした。バーゲンハンターとなって買い求めたテーブルやパラソル、吊りさげ鉢やサンダルが立派に役割を果たしました。実は、バーゲンハンターという言葉は、「たんす在庫」と共に私が30年近く前に作った造語です。昨今のような需給バランスが崩れた時代にはとりわけ大きな意味を持つ言葉だと思います。今日の消費社会を成り立たせている社会システムが持つ矛盾、それをつく買物の仕方です。創造力や想像力を働かせ、計画的にバーゲンハンターになれば、悪しき矛盾の裏をただし、社会を改める手だてにもなると思います。

 朝食の準備と共に、妻は昼食用のお稲荷さんを作り、お茶をたっぷり入れた魔法瓶と一緒にカバンに詰めました。京都駅を経由して奈良には9時過ぎに到着。すでに行列が出来ていました。三月堂の内陣から持ち出した塑像の菩薩像「日光、月光」に先ず魅せられました。前夜「日光、月光」と聞いた時は、なぜか薬師寺の鋳造の菩薩を連想していたのですが、記憶違いの意外性が感銘を深めたのかもしれません。とにかく、仏像を、目線を変えて間近に見る意味について深く考える必要がる、と思いました。

 東大寺の迫力に圧倒されました。これまでに何度か見ていたはずですが 遠き建造物などを見る時の人間の「大小」感覚は、加齢や体験などによって大きく変わるようだと考えました。大仏を、柱越しに斜め横から見た時に、ビル越しに見た満月のような大きさを感じ、しばらく見惚れまし
た。昼食は、大仏の見学前と二月堂や三月堂の見学後の2度に分けました。私がカバンにしのばせていた般若湯が時の経過をよりゆったりとさせてくれたように感じます。芝の上で、木漏れ日も浴びました。

 奈良から帰り、テラスでお茶の後、居間で「あくまき」を食べ、鋭気を養ってから近隣の常寂光寺に出掛けました。人影がなくなった庭と多宝塔を巡ったあとで住職を訪ね、生い立ちや寺の成り立ちなど初めて聞く話題に心がなごみました。すっかり西日が沈んでから下山し、夕食の用意ができた家にもどり、庭のウド、ニンジン、タンポポなどと天然ジュンサイを組み合わせたメニューを味わいました。

 翌朝は、亀山公園の展望台まで散歩して保津峡を見下ろしたり嵐山を見上げたり、朝食の後は大覚寺に出掛けて障壁画を堪能したりしました。大覚寺は嵯峨御所と呼ばれる寺で、日本最古最大の門跡寺院であり、桃山時代の襖絵などの宝庫です。たしか、モナリザ来日の返礼に、ここの「紅白梅図」がフランスに貸し出されたように記憶しています。昼食は素麺でした。かくして連休はしめくくられ、友は東に、私は授業再開の準備です。ライフスタイル論という講義で私は、「次代」と「次代が用意するであろう豊かさや幸せ」を語りつつあります。学生とは2週間ぶりの再会です。                     
           

少々歩いても汗ばまない気持ちの良い晴天でした。雨に洗われた後だったこともあって草木の緑が鮮やかでした。ここに至る前、山門をくぐったところで最初の昼食を食べ、般若湯を嗜んでいましたので心身共にさわやかな気持ちで大仏殿を眺めました。

この木製の植木鉢が約700円でした。中国製です。中国では今もどんどん木を切り出しているのでしょうか。そのお金でトップファッションや飽食に走っているとしたら金色夜叉の世界です。それではなんだか、樹木も人間も気の毒になります。なによりも、森の住処を奪われる野生生物が心配です。

日曜大工は旧玄関の前で行いました。39年前に金融公庫を使って94万円で建てた当時の玄関です。今は裏出口となり、ドアーを狭くして壁面に棚を設えています。鉄平石のたたきは、25年前に妻と一緒に張りました。その時、石の間のセメントを指先で一所懸命になって塗り込み、気づくと指先から出血していて妻に叱られました。

1980円のパラソル、一組5800円の椅子やテーブル、針金と端布で手作りした電気の
傘。こうしたものでも優雅な話題さえともなえば、とても楽しい空間にできます。妻は「何度かレジャーランドに出掛けたと思えば、風除室まで作れ」たね、と喜んでいます。妻はまだレジャーランドに出掛けたことがありません。
夕食のオニギリです。山形県に呼ばれて訪ねた時に、米沢でお土産に所望したウコギの苗が立派に育ちました。その新芽のウコギご飯とツタンカーメンのエンドウご飯のオニギリです。後者は、炊いてから保温状態で8時間経過すると緑の豆が赤く変色します。ウコギご飯は時間がたつと緑色の鮮やかさが減じます。
中国から輸入した木材4000円分、そして日本製の1500円の塗料と400円の釘で作った日曜大工の棚です。半日かかりましたが、夢中になりました。大工は私が、塗装は妻が担当しました。塗料の色の選択を私は間違ったようです。


                                                        

 

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