アイトワ塾の合宿    02/05/25                                              


 合宿の日の土曜日の朝方、妻と一緒に山椒の実を採りました。2人で採ると枝を交代で引き下ろしたりできますからとても早く済みます。ほんの2時間で2キロも採れました。その折、山椒の実は、香りが木によって異なることを実感しました。佃煮作りを生業としている津乃吉の吉田さんは、時々我が家の山椒を使って特別の佃煮を作ってくれます。その時に、彼は木によって香りが異なるといって実を採る木を選びます。だから、私たちも真剣に嗅ぎ分けたくなったのです。どうして今まで、この違いに気づかなかったのだろう か、と言いたくなるほど固体差があることを知りました。

 午後は、庭のあちらこちらで芽を出し始めたササのような細い竹を刈り取りました。こまめに刈り取って、広がって欲しくないところにまで伸びた竹の地下茎を枯らすためです。その鎌で、あちらこちらに出ていたフキやヨモギも採りました。庭を巡る小道にまで張り出したフキやヨモギはすべて刈り取りました。フキは山椒と一緒に妻にキャラブキを造ってもらうためです。ヨモギは天日で干して沐浴剤に使います。

 4時丁度に友人が車で迎えに来てくれました。アイトワ塾のメンバーと一泊どまりの合宿をすることにしていたからです。ギリシア哲学や中東情勢に造詣の深い教授を招き、大原の民宿を会場にしてイスラム教圏やユダヤ教圏などの文化や考え方、あるいは組織や歴史などを学ぶためです。講師を京都駅に迎え、会場に向かう途中で「深泥池(みどろがいけ)」に立ち寄りました。ジュンサイやモウセンゴケ、タヌキモなどの食虫植物などの生物群集は国の天然記念物です。氷河時代の遺跡ですが、一帯では開発と呼ばれる破壊が進んでおり、2年ほど前と比べても富栄養化が進んだように見えました。

 合宿した民宿は、露地で育てたシャモのすき焼きで有名です。食堂には私たちの他に十数名の学生を引率した先生がいました。合宿ゼミでしょう。夕食のあと、私たちは部屋を変えて講演に耳を傾け、質疑応答に入りました。飲酒を認めていただいたこともあって質疑に花が咲き、12時まで勉強しました。翌朝は7時半に起きて8時に朝食でした。前夜のゼミの一行とまた一緒になりましたが、6人の男子学生は全員が洋服に着替えていましたが、8人の女子学生全員と初老の男の先生は寝間着姿でした。一行は食前の「いただき ます」もなしだし、先生は一言の発言せず、注意もしませんでした。

 私は友人の車で講師と一緒にわが家まで送ってもらい、庭や人形展示室を案内したあと皆で昼食のラーメンを食べ、友人に先生を駅まで送ってもらいました。私は早速庭の手入れです。この季節は植物がものすごく育ちます。せめぎ合いながら育つ草木を、小鳥や昆虫など小動物が好むように繁らせるのは殊の外難しいのです。あちらこちらに生えている山椒やナワシロイチゴなどの刺にも要注意です。

 かくしてこの土日は、山椒の個体差やイスラムやユダヤなどの人々の個性について深く思いを馳せることができました。このたび山椒の嗅ぎ分けに真剣になった理由はもう一つあります。それは、水俣の「天の茶園」の天野君が泊まりに来た時に、実生の茶の木は一本づつ味も香りも異なるが、丈夫だから農薬の助けを借りなくても済む、と語っていたからです。天の茶園は、農薬の恐怖を避けて丈夫な実生の木を育てていますが、私はその個性的な味や香りとその多様性が醸しだすハーモニーが大好きです。今、庭ではジャスミンが花盛りで、山椒と不思議な香りのハーモニーをかもし出しています。                     
           

朝一番の仕事は、山椒の実をとることでした。我が家の庭では実生の山椒の木が何本かあります。実生なのにとげのある木やとげのない木が出来ます。これまで私たちはとげを避けてとげのない木の実をとっていました。この度その木の香りが一番よいことを知りました。津乃吉の吉田さんがこの木を狙う訳が分かりました。とげのない木が一番香りの良い木であったのはラッキーでした。

ずいぶん沢山取ったつもりですが葉を取り除くとほんの少しになりました。今年最初のキャラブキになります。煮るたびに少しづつ味や香りが異なりところが手作りの楽しいところです。

合宿した民宿から比叡山が望めました。中央のなだらかな山が東山連峰のなかで一番高い比叡山です。我が家のある西山からみる比叡山はとんがったように見えるのですが大原からみるとこんなになだらかに見えます。

カメラの方向左にずらせて撮りました。左中央あたりに三千院があります。帰途、三千院の近くの漬物屋さんに立ち寄りしば漬けなどを買いました。大原の人たちは、各家庭で秋に一年分のしば漬けをつけ込むと聞きました。早く食べ始める樽から最後に食べる樽まで樽ごとに塩梅を変えるようです。
先生を案内しようと思っている矢先に、妻の東京時代の恩師がひょっこりと、「ここだったのね」と話しながら訪ねてこられました。そこで一緒に庭を巡っていただきました。私にもこうして教え子の家を訪ねる時代がやってきてくれるのでしょうか。
フキとりをしているときにジュウヤクの葉の裏に蝶のさなぎを見つけました。金色に輝く部分がある初めてみたさなぎです。どのような蝶が孵化するのか興味津々です。


                                                        

 

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