教師の覚悟  02/06/19                                            

 ラズベリーを今年は一つも食べずじまいでした。妻は、最初の二粒か三粒は食べたようですが、あとは次々と熟れる実を小鳥に次々と先を越されたようです。だからと言うわけではありませんが、ラズベリーに大幅な手を加えました。放っておくと根を竹のように張って広がりますから、広がりすぎたところに出た木を切り取ったり背丈を詰めたりしました。後ろで日陰になっているイチジクやツツジを守るためです。そのついでに、炎天下で、一帯の草刈りもしました。野草は堆肥の山に積み、ミントなどは洗って乾燥させ、沐浴剤に加えます。ミント系の植物は今が収穫の最盛期です。

 炎天下で草刈りをしている時に、5月8日に中国で生じた亡命事件を思い出しました。私にもショッキングな事件でした。だから当時、妻に「男とは、いざという時は薄情なんだから覚悟しておくように」と予防線を張ったものです。妻も同感とみえて、2人の「男性が加勢してたら引っぱり込めたでしょうね」と残念がっていました。だが、実は、ライフスタイル論の授業でこの事件の感想文を提出してもらったのですが、女子学生は誰1人として妻子や母を放ったらかしにした夫や息子のことに触れていませんでした。だが、次のような意見がありました。「日本の偉い人は公の場でウソをつくことが多すぎるように思います」「あんな人達が政治の中心に携わっているのかと思うとわが国の今後が不安になってきました」「これまで、政治は国民のために行われていると思っていたのですが、違っていたようです」「背負う責任が大きくなるほど、自分の非はハッキリとし、真実を明らかにすべきではないですか」「ワールドカップの賑わいで(この事件は)忘れ去られるかもしれない。考えることから逃げたら何一つ解決しません」など。こうした疑問や不安を丁寧に払拭しながら、愛国心を養いたいものです。

 阪神大震災の折は、いち早く逃げ出して妻子に愛想をつかされた気の毒な夫の例がありました。野生動物の世界なら、それで充分リーダーの役割を果たしたことになるしょう。他は素早いリーダーを追って逃げればよいわけで、私の調査では死んだ野生動物はいませんでした。だから当時も、私は予防線を張って、妻に「私が先に逃げ出しても『本性を見た』なんて誤解せずに、あとを素早く追うように」と話したものです。

 かつて小学生が大勢殺されながら教師が一人も殺されなかった事件がありました。わが家の庭では、雀でも蛇に巣を襲われたら親鳥は子どもを守るために必死で蛇に挑みかかります。だから事件当時にあった教員集会で、私は次のような発言をしました。「あそこで立ちはだかれなかった先生は気の毒だと思う。一瞬の判断が狂ったのでしょう。私は立ちはだかりたい。子どもを守るために無意識に立ちはだかっていた、それが親や教育者のあるべき姿だと思う。とはいえ私も、その場に立てば逃げ出すかもしれない。その時は、不適格者として私は私にクビを命じる覚悟です」と。中国での亡命事件の感想文で、一人の学生は「人を助けるということは、一瞬の判断だと思う」と書いていました。

 こんなことを思い出しながら野良仕事に勤しみましたが、日が落ちましたので家に入りました。一足先に庭仕事を切り上げ、夕食の支度にかかっていた妻に「歳を考えてくださいね」とたしなめられました。疲れた顔をしていたのでしょう。今年は何かが異常です。小鳥は、まだ熟れていない青いイチジクの実をつついています。しかし、秋に収穫するレモングラスは、例年とは異なる植え替え方をしましたが、予想通りに育っています。        

「ブルーベリーは間もなく熟れることでしょう。ブルーベリーは、昨年お知らせしたように短期間のあいだに一斉にといってよい状態で熟れますから、毎年収穫できます。一週間ほどの間隔をおいて2度めの収穫が出来たら、あとの半分ぐらいは残して小鳥の餌にします。2度目の収穫をする前に、見つけられて食べられてしまうこともあります。

レモングラスの現状です。「植え替えの時期」という見出しでお伝えしましたが、今のところは一番左の野生に近い育て方が順調です。例年の通り1本づつばらして1から育てる植え方(左から2つ目と3つ目の鉢)の今後が見物です。きっと数本に増えて株となり、来年は右の2つの鉢のように育てて再来年は一番左の鉢のようにすることになるでしょう。その後で1本づつにばらし、1から育て直すことになると思います。それが沐浴剤としての収穫量を一番多くしそうに思います。

「日曜のように」という題で昨年ご紹介したモクセイの刈り込みは成功だったようです。危険な足場で高い脚立を使って手入れをする必要がなくなり、屋根の上から手の届く範囲でうまく刈り込めそうです。たぶん、来年は今年出した新芽にたくさん花をつけ、芳しい香をあたり一面に漂わせてくれることでしょう。

「夏野菜の植えつけ」という見出しでご紹介したトマトも順調です。ビニールの屋根が功を奏し、病気にかからずに済ませられそうに感じます。すでに可愛い実が幾つも着いています。もうすぐ夏。冷蔵から充分に冷やした香りのつよいトマトを取り出し、炎天下の仕事の合間に木漏れ日の下でかぶりつくことになるでしょう。私の小さな幸せです。

↓ちょうど今、人参系統の植物が花盛りといってよいでしょう。白い花を咲かす人参、三つ葉、パセリ、淡い黄緑の花のイタリアンセロリ。薬草のトウキも白い花です。他に黄色い花を咲かせるフェンネルは、根の部分の丸く太った部分を食べる野菜ですが、種も魅力的です。名前を失念したフェンネルに似たハーブは蕾をつけたばかりで、間もなく黄色い花をさかせることでしょう。
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