ゴミを出さない明るい町  02/07/01                                         
 
 過日、安八町という人口1万5千人の町を訪れ「ゴミを出さない明るい町」という題で話をさせてもらいました。対象は、廃棄物減量等推進協議会の方々でしたが、その年次総会の場に、町長、町議会議長、町商工会長始め、町内の小中学校5校の校長やPTA会長、町の子どもクラブや老人クラブの会長など主だった方々が200人ほど集まっておられました。子ども連れのお母さんも多数いらっしゃいました。

 この街はソーラー発電機を設置する家庭には1キロワット時につき8万円の補助金を出しています。生ゴミを堆肥にする機械の購入代金は半額補助です。広い庭付きの家に住んでいる人が大半の町で、中には菜園を作れる人も多いようですから、その気になれば家庭からでる有機物をなくすことも可能でしょう。そこで、私は「生ゴミやし尿を定期貯金だと思って生きてきた男です」と自己紹介し、「畑を銀行に、樹木を行員と考え、運用は太陽と雨に任せてきました」と切り出しました。

 これまでの私たちの生活を支えてきた社会のシステムや私たちの生き方は間違っています。私たちのような生き方をしている人は地球上では少数派で、2割の11億人に過ぎません。その生き方は、地球上の皆が真似たらたちまちにして地球が破綻する生き方です。一刻も早く見限る必要があります。そして、孫や曾孫に引き継げる未来を明るくする生き方に切り換えようではありませんか、と呼びかけました。幼児を連れたお母さんたちにどれだけ理解してもらえたのか、とても気になります。環境の世紀に相応しい三つ子の魂をいかに形成しておいてあげるか、それは親世代の責任です。

 かつて私は、農林水産省と文部省が共同で支援したプロジェクト、全国農村青少年教育振興会が全国の小中学校に呼びかけて実施した農業体験学習に係わり、その集大成として99年に開催された農業体験図画・作文コンクールでは審査委員長をさせてもらいました。そのおかげで、小学1年生から中学3年生までの膨大な作文や図画に目を通し、気づかされたことがありました。上級生になるに従って子どもたちはある1つの明らかな方向に誘われているように見えたのです。講評ではその心配をクローズアップし、その下りが朝日新聞の12月25日の「天声人語」で次のように取り上げてもらえました。「私たち大人は、大きな忘れ物をしていたのかもしれない、と(審査委員の森は)書いている。忘れ物の一つは、自然や勤労に対する意識や態度です。土は汚いもの、ミミズや虫は気持ち悪いもの、農業は辛いもの、といった気持ちを抱かせかねない方向に、子どもたちを誘っていた恐れがあります」と。

 このままでは日本の将来は真っ暗ではないでしょうか。ニュージーランドなどでは、未来世代にとって最も大切な食料の確保とアメニティーの保全に全力を注ぎ、麗しい風土や美しい空気や水などを守っています。逆に、自動車やテレビなどあればあるに越したことがないものは輸入して大事に使い、その生産や販売活動に付きまとう水や空気や土壌の汚染、産業廃棄物、単身赴任や過労死などは避けるようにしています。もちろんこうした製品も、国土や人心を荒廃させずに済ませるコストなどを盛り込める時代になれば自ら作りだすかもしれません。要は、未来世代に負担をかけないように自然を大切にするのが現世人の責務でしょう。そこを間違うと、真面目に不真面目なことをしていたようなことになり、子どもたちが気の毒です。そんな思いで話をさせてもらいました。       

お土産に再生紙のトイレットペーパーと生ゴミで造った堆肥をいただき、私は『ライフスタイル論』の授業で、下宿をしている学生から優先して分けました。その時にアメリカ の再生紙製品も見せました。テキストで紹介しているアメリカインディアンの酋長の逸話にちなんだ「セブンスジェネレーション」社の製品です。「7代先の末裔にとって良いことと思えばイエス、悪いことと思えばノーの答えを出す」ことが酋長の役目でした。

堆肥は、キャンパスの樹木や、かつて私が関与して誕生したハーブ園や菜園で生かしてもらいました。後日、この度の講話でお世話ねがった女性職員が休日の我が家にも持参してくださいました。ご主人といっしょに庭の見学です。その堆肥はさっそくカキチシャなどを植えつける畝に鋤き込みました。オカラのような色で、サラサラしていますからとても使いよい。これがよく効いたら、このうえなく便利な肥料だと思います。

トウガラシがこんなに大きくなっています。すでに収穫を始めていますが、幾つかは実が赤くなるまで残しています。嵯峨御流という華道の機関誌『嵯峨』に連載させてもらっている「華宇宙」という記事に用いる写真を撮るためです。来年の記事には、こうした無理をしなくていいように、今から別途、妻は写真を撮り溜めています。

来年の六月号の『嵯峨』では、キヌガサタケをテーマにするかもしれません。そうなった時のために妻が人形を庭に案内して撮影していました。でも、キヌガサタケは来年も出るとは限りません。そこで、シュロの実、ジュウヤクや沙羅の白い花、青や赤紫色の紫陽花など、6月に取り上げたいテーマをたくさん写真に収めてもらいました。
インゲンマメ(三度豆)やキュウリの最盛期です。初なりキュウリは浅漬けにして、インゲンマメは炒めものにして食べました。初なりキュウリの浅漬けは、妻は糠床(ぬかどこ)が慣れておらず「塩辛い」といって不満顔でしたが、今や糠床はベストの状態です。時々刻々と醗酵の具合が変わる生きた糠床の微妙な味の変化を私はとても魅力的に感じています。秋口の酸っぱい古漬けで温燗の酒を傾ける季節が今から楽しみです。初成りのトマト、多分最後の淡竹のタケノコ、カキチシャ、等も写真におさまっています。
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