一難去ってまた一難 02/07/26
一昔前、唐突に教員になることが決まった時、私は不安に襲われました。教員とは、若人をどこかへ誘ったり何かを授けたりするのが仕事なら、「どこ」へ誘い「いかなる時代」に役立つものを授ければよいのか、との自問です。敗戦直前に、真面目に特攻精神を説き、若人に死地に志願させて向かわせた教師も多かったと聞きます。
かねてから私は、工業社会は早晩破綻し、これまでとは異なる次の時代に突入するに違いないと考えてきました。だから、私生活では自分なりに考えた新しい生き方を実践してきました。この循環型の生活を通して、デサインの在り方も一新する必要があると気付かされ、「デザイン=ゴミ」と切り出すグリーン・デザイン論を組み立てました。それを学生に講じ始めた矢先に学長にされてしまいました。そこで授業評価システムを導入し、一人よがりの講義内容を改めよいようにして私自身も楽にしたいと考えたのです。ところが私は新たな悩みを抱え込むことになりました。以下は、無記名アンケート用紙に卒業生が残していった私の新しいデザイン論に対する自由意見のすべてです。
aさん、この「授業を受けて、デザインに対する見方が変わりました。それまではデザインについてそんなふうに考えたことがなかったので、授業を聴いていろいろ驚いた事がたくさんありました。デザインの見方だけでなく他の事についても自分の気付かなかった事に気付かされたり、自分の生活や考え方を変えないといけないと思うことがたくさんありました。今まで誰も教えてくれなかった事や教えて欲しかった事を学ぶことができたと思います。本当にこの授業を受けられてよかったです」 b「先生は自分だけ暑いからと言って暖房を消したりしますが、寒くたまらない学生もいるので、そんな自分勝手な行動はひかえた方がいいと思います。せめて学生と多数決でもとってほしいです」 c「デザイン論は、私自身の意識を変えることができる授業でした。いろんな人の考えや体験の話を聞き、気付かされました。とくに自然への大切さ、デザインとはこれからどうすべきなのかを考えることで、考える力がついたと思います。この学んだことは、社会に出て、役立てていきたいと思いました」 d「話す内容が難しかった。理解できなかった。授業の最終的に言いたいことが毎時間つかめなかった。授業に関係ない事が多くて、どの話が授業の内容か分からない。将来役に立つ話かもしれないけど、今の私には難しすぎた。黒板に書く字が読みずらくて、ノートに取れない所がたくさんある。それにどうやって書いたらいいのか分からなかった」 e「毎回毎回、先生の話がとてもためになる話でいい講義だと思う。もっともっとたくさんの人にもこういう先生の講義を聞けるようにしたらいいんじゃないかと思う」 f「言いたいことがよく分からなかった。先生のビデオとか奥さんの自慢(1年次生前期ライフスタイル論で実践例として紹介)とかされてもちょっとこまった」 g「レベルの高い授業と思いました。話としては難しくないことも多かったのですが、考えさされるというか、心にきました。色々な話をきかせてもらって、自分にとってはプラスになる授業でした。横文字の言葉が多くて少しついていけませんでした。勉強不足です。ありがとうございました」
学生の声にいかに耳を傾け、いかに生かせばよいのか。どのような若者に焦点を絞り、いかに誘えばよいのか。学生のために、ひいては学校や世の中をよくするために、私はいかにあればよいのか。新たな課題が加わってしまったわけです。
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40年かけて育んだ私生活の場は私の実験場です。さまざまな科学的成果をいかし、庭と家屋を一体とした循環する空間にしました。私生活から出る有機物はすべて肥料となり、燃料や農産物に生まれ変わります。夏場は樹木に埋もれたような庭になり、涼しい。それは省エネルギーや省資源面からだけでなく、健康面や美的な面でも望ましい空間にするように思います。この一角ではソーラー発電機や薪ストーブの煙突、壁面緑化などの工夫が見えます。全体の平面図は、私のページのトップに(アイトワ循環図)載せています。
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これまで人類は、数百万年に及ぶ狩猟採集時代の後に、農業革命を経て農耕牧畜文明時代に移行しました。その後、工業革命を経て第3番目の工業文明時代に入りましたが、地球人口の2割が移行した時点で深刻な環境問題に直面しているわけです。そこで私は第4の時代への移行を提唱したくなったのです。書籍では一九七四年発行のこの「縫製辞典
'75」から説き始めています 。
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それは幼い文章ですが、ファッション市場の未来を論じており、これまでの「瞬間、衝動、破壊、消耗」に爽快さを見いだす時代から、今後は「還元、創造、蓄積、持続」を指向する循環経済の時代にならざるをえないと述べています。第4時代は、巨大企業などは流行らず、小さな巨人が大切にされることでしょう。
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これまでのデザインは、ものを強制的に陳腐化する役割を兼ね備えており、ゴミの増大に貢献してきました。それがGNPを高めましたが、物的に豊かになればなるほどゴミを増やし、環境破壊を進めるだけでなく、人々を画一化し、アイデンティティを見失わせていた恐れがあります。そんな危惧の念もこめてグリーン・デザイン論を著しました。この全文は別のサイトで公表しています。(http://www2.plala.or.jp/Machami/aightowa/
)のエコロジーライフに「グリーン・デザインの方向と地平」 として掲載しています。
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グリーン・デザイン論をまとめるために十数年にわたってフィールド調査をしました。その先で、ブラッドレーさんとも出会いました。この一書はアメリカの先進的な企業や団体などの実例報告です。アメリカでは多くの人や企業が環境の世紀に焦点を絞った動きを始め、成果を収めかけていました。その矢先にブッシュが登壇し、時計の針を逆転させましたが、ブッシュは一期で降壇し、悪しき大統領に列せられるのではないかと心配です。
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