新しい豊かさ 02/09/24
今月は情報発信をする機会に恵まれました。雑誌を通じた発信やスピーチによる発信の機会です。スピーチは企業人や女性グループが主な対象でしたが、一番印象に残っているのは1つの例外です。岐阜県が支援して立ちあげた子どもを対象とした「ぎふ地球環境塾」という勉強会です。私も立ち上げの相談に乗らせてもらい、副塾長を仰せつかりました。24人の小学生とその24人の保護者を対象とする10回シリーズの勉強会で、3倍もの応募がありました。環境教育は知的好奇心が盛んで感受性の芽が育つ子どもの頃から始めるのが一番大切だと言われます。たから喜んで講師の一人を引き受けました。受講した人の中から、新しい豊かさに目覚められる人が大勢現れてほしいものです。
これまでの豊かさは、一部の人を幸せにする陰で多くの人を不幸にする豊かさでした。誰かを豊かにすれば、他の多くの人を貧しくしました。今は南北格差が問題になっていますが、それで済むわけではなく最後は皆が地獄に落ちます。今は地球人口の2割の人が世界の富の8割を占め、最も貧しい2割の人は1日1ドル以下の生活をしています。このまは球温暖化などが進み、弱いものから順にすべての人間までが窮地に追い込まれてしまいます。かといって、これまでの豊かさは麻薬中毒のようなもので、深みにはまることはあっても抜け出しにくいものです。だから、子どもの頃に、異なる豊かさがあることに気付き、選択の余地を広げられるようにしてあげるべきです。『沈黙の春』で世に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソンが、絶筆に『センス・オブ・ワンダー』を選んだ理由はそこにあったのではないでしょうか。自然の美しさや不思議さに「感動する心」は子どもの時に授けられないと身につかないといわれます。
「ぎふ地球環境塾」では、私は子どもたちに「エコライフ」という題目で話をしました。自然の懐に抱かれる生活の紹介です。ウグイスやコジュケイの声に目覚め、カタツムリの恋に立ち会ったり生まれて初めて見る昆虫の姿に感動したりする生活です。時が来れば花が開き、香りを放ち、季節を教えてもらう。きれいな空気や美味しい水に生きる勇気を与えられる。そうした豊かさを、ある人は絵で、ある人は詩で、ある人は旋律で、とさまざまに表現する豊かさもあります。わが家では、美味しい野菜を私が作り、妻が美味しく調理をし、それを友を招いて分かち合います。私たちは、訪ねてもらえた友から、見知らぬ世界の驚きや異なる解釈に触れる感動などを届けてもらいます。そんな時に、本当に「豊かになれた」と実感します。
子どもたちに、私たちは庭や畑に使う水をどうして自然から得ているのか、庭や畑から収穫物を得たあとはどのようはお返しをし、次の収穫物に結び付けているのか、こうしたことも語りました。循環する庭、エコライフガーデンの説明です。こうした生き方があったことを子どもの間に心に刻み込み、いろいろな生きる自信や実感の得方があることを知ってもらいたかったのです。クレヨンハウスの『クーヨン』先月号で私たち夫婦の生き方や考え方が紹介されたことはすでに触れましたが、ベネッセの『あなたにエール』今月号で妻の人形作りが紹介され、表紙に妻がとりあげられました。PHPの『ほんとうの時代』の来月号で私の生き方や考え方が紹介されそうです。私は40数年来、妻は30年ほど前に結婚で合流して以来、ズーッと信じるままに同じ生活をたんたんと繰り返して来たわけですが、それが豊かに見えるようになったのかもしれません。
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