親交と弁慶 02/10/13
遠来の友を迎えたり、遠方の知人から季節の便りをもらったり、わが家の亀に名前がついたりした一週間でした。遠来の友は、台湾から突然訪ねてくれた陳(ちん)さんです。7年前に台湾を訪ねた時に、連れていってくれた日本人の好青年に紹介された大学生で、とても世話になりました。季節の便りは、秋田の知人が山菜などを届けてくれたものです。亀の名前は、妻が亀を散歩に連れ出した時に自動的に浮かんだようです。
台湾旅行は、台湾の産業立地や服飾動向の勉強とか原子力発電所の見学が主目的でしたが、私にとって印象深かったことは、陳さんと訪ねた故宮博物館と、台風の日に好青年と少数民族を訪ねようとした小旅行の思い出です。小旅行は雨が強くなって途中で断念、帰途二人は温泉があることに気づき誰もいない岩風呂にじっくりとつかりました。陳さんと訪ねた故宮博物館では、宝物を見るより陳さんとの会話の方が楽しくなり、喫茶室で閉館まで話し込んでいました。その後、4年前に陳さんはご母堂と一緒にわが家を訪ねてくれています。その折は、庭でバーベキューパーティーを開く日に当たっていましたから夜更けまで大勢で騒ぎました。今回は陳さんの希望で妻は久しぶりのすき焼きをしました。思えばこの4年の間に、台湾では大地震があったりリーダーを投票で決めたりしています。わが家ではすき焼きが好物だった母や愛犬の先代ハッピーを失っています。
すき焼きと風呂の後、二人でお酒やビールを飲みながら、台湾で生じている様々なことを話題にしました。お茶の喫し方やツーツーツァン(自助餐)というセルフサービスのレストランのこと、スゥーツー(素食)と呼ぶ精進料理やツースゥー(吃素)と呼ぶ菜食主義の話もでました。人間や民族のアイデンティティも話題にしました。台湾には十幾つかの少数民族が住んでいますが、それらの部落を訪ね歩くにはどれぐらいの日程を要するのかも話しあいました。翌朝は、3人で小倉山の麓にある亀山公園を通って保津川まで出たあと、帰途は竹のトンネルを通って野々宮神社まで足をのばしました。その後、陳さんは一人で自転車で化野念仏寺や祇王寺を訪ねています。彼は、これらの神社や寺と縁の深い源氏物語も、徒然草も、平家物語もよく知っていました。
秋田の知人は、初めて口にするミズの実などを小袋にいれ、食し方や産地の説明をつけて届けてくれました。茸は痛みやすいとかで入っていなかったのが残念ですが、それは秋田を訪ねて食すべきものでしょう。一度、あのさまざまな茸を土地柄の食し方を試みたいものです。その季節は、イブリガッコの美味しい季節でもあるはずです。燻製の大根を漬けたタクワンと言ってよいのでしょうか。「今が旬だよ」と知らせてもらえば、すぐにでも飛んで行けるような身分になりたいものです。
ところで、飼っている亀には妻が「弁慶」と名付けました。日に日に涼しくなってきましたから妻は亀の冬眠のことが心配になったようです。見つけたところに連れ出し、自然に慣らせるために散歩をさせようとしたようです。ところが、ガラス器の中では人怖じもしないくせに、外で放すと手足や首を引っ込めたまま微動だにしなかったといいます。自然に圧倒されたのでしょうか。これではとうてい一人では冬眠などできそうにないと心配しながら連れ戻ったようです。器に戻された内弁慶は、イリコだけでなく、刺し身であれ、蒲鉾であれ、両手を操りながら大きな口を開けてパクついています。妻がガラス容器に指を当てると、ガラスのむこうで大きな口を開け、指にかぶりつこうとします。
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