65歳を迎える年  03/01/09

天候も心境もさわやかな元旦です。少し体の節々がきしみますが、それは年末の心地よい庭仕事の名残りです。妻は台所で、コトコトとお雑煮に入れる野菜を切っています。これから家族揃って、といっても今や二人だけですが、仏壇や神棚に手をあわせ、祝いのお茶で口をさわやかにし、屠蘇酒を注ぎあって新年の挨拶を交わします。その折に、私は心の中で「かくありたいと願うこと」を心の中でつぶやくことでしょう。

 祝いのお茶には昆布と梅干しが入っていますが、お茶と梅干しは九州から送ってもらったもので、梅干しは都城の紅梅園、お茶は水俣の天野製茶のものです。元日のお三時は塩昆布をそえた善哉をいただくことにしていますが、これはともに京都のものです。塩昆布は津の吉、善哉は仙太郎です。いずれも無農薬・有機栽培の原料や天然の塩を用い、添加物を用いないなど、安全や安心の製品ですが、わたしはそれ以上のものを求めて愛用しています。それ以上のものとは、美味しいとか香りがよい、あるいは姿がよいだけではなく、生産や製造に係わっている人たちの願いや心意気への共感です。

 今、庭のイノシシ坂には櫟(クヌギ)の枝が転がっています。5〜6年に一度のシイタケのほだ木を新しくするために暮れに落とした太い枝です。種駒を正月下旬に打ち込むつもりです。もちろん落ち葉掃除も延べ6日かけてしました。落ち葉かきをしながら生け垣などの徒長枝を切り取ったり、晩夏や秋を彩った草花の残滓や屋根や樋にたまった落ち葉を取り除いたりしましたから時間がかかったわけです。その間に、畑ではエンドウ豆の畝をたてて苗を移植したり、アンズの木の選定やしめ縄作りもしています。

 アンズの剪定には延べにすれば8時間程を、3日にわたってかけました。天候の都合や途中で友人がハンカチの木の苗木やユキモチソウの球根などをもって訪ねてくれたりしたからです。もちろん広縁の天窓掃除にも相当の時間を割きました。アンズの木が広縁の天窓に、夏の間の木陰作りの役目を終えて落とした葉を取り除く作業です。ついでにガラスをデッキブラシで洗いました。これで広縁はよく日を通し温室のようになります。

 30日は、友人たちとしめ縄作りをしました。10時過ぎから裏山にでかけてウラジロをとり、藁クズなどの掃除が済んだのは午後の3時でした。その間に昼食がわりに焼き芋、あべかわ餅、そしてアップルパイとお茶を食しました。今回作ったしめ縄は10でした。藁を届けて下さった関係者の3軒と、開店以来アイトワの喫茶店を守る5人の主婦の家庭用と店用の他に、もう1つは参加したくともできなかった友人のためです。

 振り返れば、しめ縄作りは約40年間、アンズの剪定は43年間も続けてきたことになります。特にアンズの剪定はここ10数年来は木が大きくなり1日仕事になりましたが、多分死ぬまで続けることになるでしょう。同様に、妻の手作り料理、紅梅園の梅干しや梅肉エキスなどの梅製品、津の吉の佃煮、仙太郎の和菓子、とりわけ小豆製品、天野製茶のお茶などを体にとり込み続けたいと思います。それが私です。大晦日最後の私の役目はお鑑餅の飾りつけでしたが、この度は庭で渋柿もとれず串柿を買いました。
 昨年は、泉と呼んでいる山水が自然に溜まる小さな池の水が長期に渡って枯れました。渋柿の不作ともにかつて体験のないことでした。年の瀬に、知人が藤沢名物の信州川上純手打ちの生ソバを送ってくれましたので、それで年を越しました。この夏、私は65歳になりますが、おだやかな迎え方ができそうな元旦です。
                                                               


剪定前のアンズの木に積もった薄雪です。この冬はすでに雪が二度降りました。暮れの25日の夜半から粉雪が降っていたようで26日の朝は薄化粧で迎えました。翌27日も薄化粧の朝となり、昼前まで降りやみませんでした。だから段取りがくるい、アンズの剪定が3日間にわたりました。おかげで、温室仕事がはかどり、鉢植えの宿根サルビヤや六甲桜草の土の入れ替えができました。



元旦の座敷です。今年は居間で新年の祝いをしましたので、お重などを運ぶために座敷の襖を開けた時の光景です。冷蔵庫のように冷える部屋ですから、お煮染めなどを詰めおわるといつも妻は運び込んでいます。縁先にかかっている簾(すだれ)は、これぞ職人という気がする人、今では友人の手作り製品です。こうしたヒトやモノに囲まれることに私は無常の喜びを感じます。両親が入った仏壇はこの部屋にあります。



櫟の枝です。こうした枝を10本ばかり落としました。新しいほだ木を作り、5年ほど頑張ってもらおうと思っているわけです。これから1カ月ほど乾燥させてから種駒を打ち込むことになります。前に作ったほだ木は最後のふんばりをして冬子(ふゆご)のシイタケを出していますが、もう限界です。この太い枝を落とした櫟の木の上部3分の2位を、新芽を出す春までに切り取りたいと思っています。それは薪にします。


最初の一杯分の落ち葉を袋に詰め込んだ時はどうなることかと心配になりました。90センチ四方ほどの袋に詰め込んだのに、仮に落ち葉を積んでいた山は少しも減っていないように見えたからです。でも、「たかがしれてますよ」との妻の一言で気を持ち直しました。それは、妻たちが1カ月余りをかけて喫茶店の周りやパーキングの落ち葉をかき集めて運んだものですから。結局、その山の5倍位の落ち葉をかき集めて積み上げました。



祝いのお茶の昆布には、毎年アイトワ塾生からいただくお昆布を使います。お雑煮は、子芋、人参、大根、ゴボウ、豆腐、揚げを刻み込んだ白味噌仕立てです。澄まし雑煮もつくりますが、三が日は白味噌仕立てと決めています。お煮染めや酢の物も母がいた頃とまったく同じです。だから、三が日はそれはそれで楽しいのですが、その後に始まる妻が創案する手料理の日々を待ち遠しくする三日間でもあるわけです。

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