雨のち晴れの 03/01/27

                                                         アイトワが冬休みに入る前々日の朝は雨でした。晴れておれば庭に出て、切り取った櫟の頭などを薪にするところでしたが、雨を幸いに書斎に籠もりました。午後は雨があがったのですが籠もり続けました。アイトワが1カ月の冬休みに入り喫茶室のストーブに火が入らなくなる20日以前は、なるべく書斎で仕事がしたいのです。なぜなら、喫茶室にあるストーブの煙突は上階の書斎の一角を貫いており、余熱で書斎が温まるからです。喫茶店のお客さんをお迎えする妻たち近郊のご婦人たちは、私が作った薪をストーブで焚きますが、その余熱をもらえるようにしているのです。

 書斎はわが家の中では一番散らかっている部屋かもしれません。だが、想像力や創造力に富んだ子どもが入ればきっと興奮するに違いありません。その昔に私が遊んだコマなどのオモチャや、ドイツやアメリカで手に入れた遊びながら環境問題について識見が得られるゲームなどがあります。30年も40年も前に手に入れたタイのボロブドール寺院の赤レンガの一片やローマのカラカラ浴場を飾っていたモザイク用大理石の破片をはじめ、ユタ州のブライスキャニオンで拾った赤い砂岩のかけらや四川省の楽山大仏を彫った時に出た赤い砂岩の断片などもあります。カイロ博物館の前庭で手に入れたパピルスの一葉やウイリアム・モリスの足跡を訪ねてロンドン郊外を巡った折に手に入れたローリエの一枝もあります。このローリエはモリスの墓を霧雨から守るようにした繁っていたものです。もちろん、宇宙の写真や図入りの珍しい動植物や古代文明の書籍もあります。

 他にもわが家には散らかっている部屋があるはずですが、分かりません。妻の化粧室や書斎はもっと散らかっているとしても、そこには私は入りませんし、注意もしません。妻は私の書斎にお茶を運ぶなどで出入り自由で、こちらの手の内は読まれています。だから注意をしても私の書斎を「見倣ってるだけ」と言われてしまえばそれまでです。でも、いつか落ちつけば、私は書斎を整理したいと考えています。

 月曜と火曜も在宅でしたが、梅雨空のような天候でした。その晴れ間を見て、大きな斧と薪割り台を二揃い持ち出し、薪割りを始めました。いつの間にか、妻も薪割りの楽しさを覚えたようで、よく付き合います。檪は下部2メートルほど残して切り取りましたが、切り口の直径は43センチもありました。こうした太い木を割るのはとても爽快です。ストーブや風呂焚きに使う薪ですが、ストーブ用にはトロトロと長時間燃え続けるように太い薪もつくります。何日かに分けて薪割りをすることにしました。

 体が薪割りで温まったところで球根の植え込みに移りました。少し遅れましたが50球ほどのチューリップと、それぞれ10球ほどの水仙やユリです。他に、二球のタツナミソウと一球のムサシアブミですが山野草の球根も埋め込みました。また、枯れたハーブの残滓を掃除して堆肥と灰を入れ、モクセイや藤の徒長枝の整理もしました。

 夕食後は、いつものように二人は別々の部屋に分かれ、好きなことをしました。妻の自由時間の使い方は大部分が人形つくりです。私は日によって変わります。この度は、居間で2つの講演と1つの特別講義のための準備をしながら風呂焚きを担当しました。寒の頃は沸くまでに2時間ほどかかります。特講は、初めて声をかけていただいた公立の学校ですが、社会体験のある人が大勢混じっているとのことだし森を大切に思う人たちということですから楽しみです。           


輪切りにした櫟の幹です。こうした太い木は割り応えがありす。黒っぽい樹皮が、ビシッという音と共にバクッと割れて二つの白い木目を露にする瞬間は気持ちのよいものです。松は櫟ほど固くありませんからパクッと割れる感じです。杉はその音や感触よりもサッと鼻に達する香りが魅力です。香りでいえば杉は檜や楠にはかないませんが、この度は杉の香りを堪能しました。妻もこうした味わいのとりこになったようで、私が一人で割っていても音を聞きつけると「代わって下さい」といって出てきます。




わが家で収穫したラベンダーです。これまでにラベンダーの苗を2〜3度にわたって植えたことがありますが、いずれも失敗しています。これはプランターに植えたものを知人からもらったものですが、元気に2年目の冬を迎えて新しい芽を出しましたので、年越しの枝を収穫しました。沐浴剤に加えようと思いますが、今年最初の収穫物にするか、前年度最後の収穫物にするかは未定です。予定外の収穫でしたから、前年度の沐浴剤はすでに完成しています。ラベンダーの乾燥具合を見てから、そこに追加するかどうかを決めます。



学校の機関誌に使う写真を求められ、妻が撮ってくれた写真です。斧を振り下ろし、バクッと2つに割れ飛んだ瞬間です。松はこれぐらいの太さになるとそう簡単には割れませんが、妻も近頃は生の櫟なら二振りぐらいで割ってしまいます。30年近い年期でコツを会得したのでしょうが、こうなると面白くなるはずです。私は、40数年来趣味を聞かれると菜園とか園芸と答え、スポーツは薪割りと書いてきました。


ブライスキャニオンです。ユタ州立大学の車で案内してもらいました。この渓谷の岩石のひとかけらを記念にもらって帰りました。そのかけらを見るたびに雄大な渓谷と案内してもらった青年を思い出します。我が家には小さな石ころがたくさんあります。拾ったりもらったりしたものですが、いずれも遠大な歴史を秘めた小さなかけらです。



井戸枠を生かした花壇です。四角い建物を柔らかくしてくれるように思って配しました。いずれにもハーブを植え込んでいます。春のために追肥をしました。過日、アメジストセイジを植え替えていたら植木鉢の中からセミの幼虫が一匹現れました。この花壇の中にも蝉は卵を産みつけているのでしょうか。この花壇なら3匹ぐらいのセミを育てる許容量がありそうです。
topへ戻る

このサイトへのご意見、ご感想などは、staff@shizen.ne.jpまで