菜の収穫 03/02/03
妻は面白い野菜の収穫の仕方をします。それはカキチシャなどの野菜の収穫からヒントを得たのかもしれません。野菜は、一般的には抜き取って収穫するものですが、カキチシャは背を伸ばしながら葉を茂らせますから、大きく育った下の葉から順にかき取って食材にします。これに似た方式で妻は他の野菜を収穫することがあるのです。特に自然生えした混血の大きな野菜は、葉をかき取って使うのです。そのわけは、葉が何枚かあれば2人分のお浸しや煮物ぐらいはできるほど大きいからです。でも、それが面白いのではなく、葉のかき取り方が面白いのです。
カキチシャは大きく育った下の葉から順にかき取りますが、妻は大きく育った下の方の大きな葉は幾枚か残し、その上の葉を適当に間引くようにしてかき取るのです。そのわけは、大きく育った葉は固いのが常ですから食べずに残し、光合成に貢献させ、上の葉をすくすくと柔らかく育てさせて収穫するわけです。この収穫の仕方は別の理由で価値があるようです。混血の野菜は、株によっての葉の色や形が異なるだけでなく、味もそれぞれ異なります。だから、かき取って一度試し使いすれば、後の分はより的確な用途に使える勘定です。炒めものにむく菜、お浸しが美味しい菜、煮物や味噌汁の具にむく菜、サラダに使える菜、とそれぞれの用途によって使い分けると菜をそれだけ美味しく食べることができるわけです。
畑に立って菜を見渡しながら、メニューを考えるのは楽しいことでしょうし、きっと美味しい料理を作りたくなることでしょう。もちろんこれに似た方式を採り入れているレストランもあります。サンランシスコに行くと私はときどきバークレイまで足を延ばし、シェ・パニスというレストランを訪ねます。そこは近郊の有機栽培農家の支援を目的の一つにしていますが、予約をしておかないとまず食べられないほど人気のあるレストランです。だが、メニューは事前には分からず、訪ねてみて始めて分かります。その理由は、事前にどの様な野菜などが手に入るか分からないからです。有機栽培農家の数は限られていますし、路地野菜は収穫の適時が予測しにくいからです。前日に雨が降るか降らないかなど天候で味が変わってしまうものです。
畑に立ち、私も野菜をながめることがあります。とりわけ自生した野菜は目立ちますから目が行ってしまいます。そのような時に、いかにも収穫してもらいたがっているように見える野菜があります。後で畑に再び出ると、その野菜がなくなっていたり葉をかき取られたりしていることが多いのです。妻の目にも、同じように見えたのでしょう。それは大きさの順番というわけではないので面白いなあと思います。小粒で早熟の菜もありますし、菜によっては収穫の適時も変わります。
たかが野菜ごときに、と思われる方が多いことでしょうが、46年間も同じ畑で営々と路地で野菜を育て、混血の自然生えの野菜とも付き合ったりしてきましたから、いろんなことが見えてくるのです。とりわけ10年ほど前から100メートルほど下手の広い畑が契約栽培農家に貸し出され、商品化を目的とした野菜が作られるようになり、この思いは深まりました。農業は、工業化すべきではない、とつくづく思います。機械や農薬を多用する農業の工業化は、これまでに分かっていない新たな問題を、いつの日にか生じさせるに違いありません。人間性が蝕まれていそうで心配です。
わが家で重宝しているカキチシャの一種です。生食に向きますが、スープに入れても美味しいし、煮てもよい味です。こうして真冬でも育ちますから、一年中お世話になっている感じです。これから背が30センチ異常にも高くなりますが、夏の蒸す季節は嫌いなようです。だから、日当たりと湿気には気をつける必要があります。隣の畝で次のカキチシャが育ちつつあります。
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混血の野菜です。葉の形も色も異なるように、味も異なります。今年は誕生しませんでしたが、日の菜の血が混じった赤みがかった野菜ができることもあります。自生の野菜は自分勝手にベストの状態だと思って芽吹くからでしょうか、とても大きく育つのが通例です。といっても、わが家の菜園では巨大になるのは5株から多い年でも10株どまりです。お互いに牽制し合っているのかもしれません。
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妻流の収穫をした野菜の姿です。光合成に貢献させる葉と、これから収穫する若い葉を残しています。もちろんお気に入りの菜はより多くの葉をかき取られるようです。この収穫方法は、カキチシャがヒントになっただけでなく、ブロッコリーや花菜の収穫もヒントになったはずです。それらは、育った葉はとらずに花芽をとったあと、わが家では次々と枝芽を育てて収穫します。
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今年の壬生菜は惨めでした。本来の壬生菜は路地で霜をかぶらせて育てました。本来のの種類とは異なり、霜や寒さに弱くて、大きくなると葉が傷んでしまうのです。昔のの壬生菜は、霜を何回も被って次第に柔らかくて味が濃くなる今頃から美味しくなるシーズンですが、今年のは駄目でした。当初はとても順調に育ちましたから期待したのですが、がっかりしました。たぶんビニールハウスで即席栽培するのに適した品種にしたのでしょう。
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わが家の朝食はボリュームたっぷりですが、10時頃にはおやつつの時間にします。野菜をたっぷり使った朝食ですからすぐお腹が空くのかもしれません。今日はお浸しが出ましたが、この他に野菜は味噌汁の具と納豆に大量に刻み込んだネギでした。もちろんスグキと日の菜の漬物や、秋から冷凍してあった唐がらしの葉の佃煮もでました。動物性タンパク質は、焼いた粕漬けの鮭と味噌汁と納豆に入った入った少々の豚と卵です。スグキの漬物は、妻がお友達からいただいたものです。
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