再会と出会い 03/04/28

 出会いや再会の機会に恵まれた一週間でした。まずそれは、短大での最初の教え子から始まりました。カナダにわたり、簪(かんざし)などの手工芸品を自分で作って売ることができる小さな会社に勤めている人ですが、一時帰国したので将来の相談をしたいといって訪ねてくれました。カナダへの出発以前に会ってからあしかけ2年ぶりの再会です。穏やかな人が自力で生きる逞しい精神も身につけたようで、話がはずみました。

 好天の火曜日は朝早くからビックリしました。わが家の前の道路の掃除を始めていると、「手伝いましょうか」と通りがかりの若者から声をかけられたからです。2年前に看護師を養成する専門学校で非常勤講師をしたことがありますが、その時の教え子との再会でした。当時、自宅での死を願った母の看病をしていましたから、これからの医療にとって重要と思われる点についても触れたはずです。インドでマザーテレサの活動を見たことがありますが、患者が求める心の支えの大切さをその時に教えられました。担当した「環境と生活」という講座は、看護師資格の国家試験とは関係がないのに彼はとても熱心に受講し、当時も一度わが家を訪ねてくれています。この度は、京都での研修旅行で自由時間ができたようです。他にも数名の女子学生が訪ねてくれました。

 その日、朝早くから道路まで掃除をしていたのは夕刻に来客予定が入っていたからです。全国組織の企業や公社や官公庁などに勤め、京都での責任者の立場にある人たちの来訪です。わが家の庭で参集し、樹木と触れ合ったあとで会場を天龍寺に移し、「太陽の恵みの範囲で豊かに生きる」という演題で私の話に付き合ってもらうことになっていました。京都で過ごすことになったさまざまな分野の方々が、京都を学ぶ機会とされるサークルだけに、出会いも夕食時の話題もなごやかで楽しいものでした。

 水曜日に学校に行くと、学生から面談希望が出ていることを知らされました。入学前に九州から手紙をもらったこともある新入生でした。実は、今春から歯科衛生科が3年制に移行しており、歯科衛生士を目指す人にとっては最高学府となっています。そこを目指して熊本から入学した学生です。単に歯科衛生士の国家資格をとるだけなら2年間で充分でしょうが、これからの社会は3年制を必要とするに違いありません。治療を中心とするこれまでの歯科医療から、予防を中心とするそれに転換する必要があると思うからです。そのためには資質を飛躍的に高め、歯科医療の前面に立てる人材を育成することが求められます。歯は自然治癒を望めないだけに、予防にこそ力を入れるべきです。そうした意識や情熱などの精神面の養成まで充実するには3年制でないと難しいはずです。その3年生に挑戦した学生だけに楽しい出会いとなりました。

 再会は、もう一つありました。銭亀の「弁慶」が冬眠からお目覚めです。その翌日から旺盛な食欲を示しています。庭では温かい温室などに冬眠したトカゲやカナヘビから順に次々と目覚め、元気な顔を見せています。出会いは、明日の日曜日にもあります。『自休自足』という雑誌が「森を創った人」を特集するので取材をしたいと何カ月も前から申入れを受けていました。新緑が美しくなるのを待つことになった取材班は、当初の予定を天候の都合で更に2日遅らされましたが、この2日間の雨による延期は効果的になりそうです。目に見えるほどの勢いで新緑は日々濃くなっており、庭は2日でよりいっそう鬱蒼とするに違いありません。


ひょっこり立ち寄ってくれた教え子です。私は、母の介護を通して優れた看護師の必要性を痛感しました。母は自宅で死ぬことを望み、妻が看護に当たりました。主治医にあと2〜3日の命といわれてからでも妻は45日も生き延びさせ、主治医に舌を巻かせました。それは看護技術よりも看護する心構え、たとえば生きる意義や食べる意欲の説き方などの大切さに気づかせます。

昨年、友人のご母堂に土を替えていただいたシャクナゲです。根をあれだけ切ったのに、それが弱らせずにむしろ再生を促したのでしょう。五分咲きの頃に、友人にご母堂をご案内いただき、花と再会していただきました。私の母もシャクナゲが大好きでしたから、この鉢は母屋の玄関に置いてあります。側の素敵なミミヅクの置物は、妻の友人から頂いたものです。

庭で自然に芽をだしたユキモチソウが花までつけました。昨年、目立たないわが家の一番高台で出会った時は「マムシグサかな?」と思ったのですが、花をつけた今年はユキモチソウだと分かりました。これは楽しい再会です。球根で越年しますが、何年ぐらいの命でしょうか。多分、種を小鳥が糞で運んだのでしょうが、その親株との出会いが楽しみです。

茶やウコギのように葉を食材とする木、クロモジや月桂樹、山椒やニッキなどの香木、多様な果樹や薬木、あるいは生け垣など、様々な役割を担った庭の木を見学いただいた後で、薪割りをしもらいました。常日頃は神経をすり減らす仕事をしておられる方々だし初めての体験者が多かったのですが、皆さんお見事でした。賑わいました。

弁慶が元気に目覚めました。これから妻は晩酌の肴に時々マグロの刺し身を買ってくれることでしょう。弁慶はマグロの刺し身が大好物です。大部分は私が食べるのですが、その前と後に弁慶にやっているようですから、私はお相伴ということでしょう。弁慶君、ありがとう。
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