心を豊かに 03/05/26

 久し振りで妻が焚いた風呂に入りました。妻の個展が終わった日の夜のことです。「今日から私が」と妻が焚きつけ、ぬるめの時に声をかけてくれましたから、じわじわと温かくなる心地好さを味わいました。ほのかに漂ってくる木の香りもよいものです。薪で焚く湯は心を豊かにしてくれます。その日は、昼前に、とても強い雨が降り、雷鳴もとどろきましたから、荒れた1日になりそうだと心配しました。だが、妻の個展はとどこおりなく終ったようですし、私の庭仕事も思いのほか進み、よい1日になりました。

 日がさしたかと思うとまた雷鳴とともに降り出す人騒がせな一日でしたが、アイトワの閉店日で、私は一人で留守番でしたから好きなように動けました。濡れた衣服を変えたり庭でとれた新茶でリフレッシュしたりしながら3度に分けて庭に出て、ユキモチソウやシラネアオイなど山野草の根元に腐葉土をまいたり、妻がポットで育てたトウモロコシの苗を畝に本植えしたり、前日に用意した畝にコイモを植え込んだり、大賀ハスの水鉢の手入れをしたりしました。雨が降りやむのを待つ間は本を読みました。

 妻は個展で、大勢の方と旧交を温めた上に、新たな大勢の方に人形を評価してもらうことができたようです。さらに、和服に対する認識も新たにしたといいます。会期中は和服で通していましたが、その多くは母譲りの代物でした。半世紀あるいはもっと昔の和服に多くの方の目がとまったようです。その中には、私の友人であり、京都で長年呉服を生業としてきた本職中の本職も含まれています。そうした人から、すでに消滅した伝統の技術や、職人技の稀少性や貴重性などを教えてもらったわけです。和服は、こうした古い代物を新鮮な気持ちで身につけられますし、長男の嫁として仕えた母の継承者の証にもなるわけですから着る者の心を豊かするようです。

 畑のツタンカーメンのエンドウマメが収穫期に入りました。わが家ではこのエンドウが混血しないようにするために何年も前から他の種類のエンドウを作っていません。しかし、毎年キヌサヤエンドウを下さる方が近隣に住んでおられるし、今年は他に2軒の近隣から「里から送ってきました」といってエンドウマメとスナックエンドウをいただいたり、オタフクマメをくださる方があるなど、豆に恵まれた年になりました。

 このところ学校に出た日は、学長時代よりも学生と昼食をともにする頻度が多くなっています。歴代の学長と違って私は講義を持ち続けましたし、秘書をなくしましたからお茶も自分で入れるようになりました。だから、学長室を学生に解放し、希望者と一緒に学長室で昼食をとり、お茶のサービスをしてきました。その時より、学生は気楽に訪ねてくれますし、「センセ、姉はガッカリして帰ったよ」といったぐあいに気安く話しかけてくれます。妹の入学式に、卒業生のお姉さんが私の話を聞きたいといって付いて来たというのです。卒業式で告別の辞でも聞いてもらったのでしょう。私は希望や勇気を届けたくて学生に贈る言葉には結構気を使っていましたからとても嬉しくなりました。

 これからアイトワ塾の一泊合宿で大原に出掛けます。ゲストをお招きして基調の話をしていただき、夕食をはさんでディスカッションをします。きっと塾生は初めて知る新しい分野に触れ、知的好奇心を駆り立てられるに違いありません。塾生は個性豊かな人が揃っていますが、価値観や美意識が似ているからでしょうか、ディスカッションは時には激しくなりますが、いつもお互いを高めあう方向に進みますから心が豊かになります。


雨上がりの庭で、実生のクボガキが花をつけていました。一般の富有柿や次郎柿などは雌花しかつけませんが、クボガキは雄花もつけます。わが家の富有柿や次郎柿も単為結果もするのでしょうが、いつも種をたくさん入っていますからハチなどにクボガキの雄花の花粉を運んでもっているのでしょう。

わが家の今年の新茶です。茶の葉や山椒の実を摘む時期となりました。茶は、私が摘んだ葉を、妻が蒸したり揉んだりして造ります。今回は、妻は個展で昼間は留守でしたから天火乾しはあきらめ、初めて電子レンジで乾燥させていました。山椒の実は、個展が終わってから妻が摘み取り、煮ていました。

シイタケのホダ木を立て掛けました。横にして積んであった「仮伏せ」の状態から、梅雨に入るまでに「本伏せ」にします。うまく菌が育っておれば、木漏れ日の下で毎年2度にわたって向こう5年ぐらいはシイタケが出ます。今回も菌がうまく繁殖してくれているかな。

ツタンカーメンのエンドウマメでつくる豆ご飯は、普通の豆ご飯と変わりがないのですが、ある状態を保ちますと赤飯のようになります。笊の豆は、二軒の近隣からのいただきもの(右隅の少し色がついたのはツタンカーメンのエンドウ)です。オタフクマメ、エンドウマメ、スナックエンドウが写っています。先にいただいたキヌサヤは食べてしまいました。

コイモ(奥)とトウモロコシ(手前)を植えつけた畝です。コイモは九州の都城から送られて来た種芋です。有機栽培で育てた紅梅の実や天然塩で造る梅干など、安心このうえない本物の梅製品で知られる「紅梅園」の畑で育ったコイモです。トウモロコシは、中国奥地の少数民族を訪ねた時に、苗(ミャオ)族の集落でもらった種に始まっています。
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