晴読と夏の備え 03/06/16

 「晴読」から一週間は始まり、「雨読」も楽しみました。それは前週末のちょっとハード過ぎた「晴耕」のせいでしょう。月曜の朝は、思わず縁側の安楽椅子に寝そべり、朝食を待つまでの間を晴読に当てていました。快晴の朝に、庭に出ずに寝そべり、読書をした記憶はまずありません。晴れていても庭に出ない朝はよくありますが、急ぎのデスクワークなどが主な理由で、読書のためではありません。

 ちょっとハード過ぎた晴耕とは、野外パーティー会場の土木工事やエンドウマメあとを耕したり椿や竹を剪定したりする作業でした。これらの作業には前部分や後部分が伴っていました。エンドウマメあとの耕作では、まづ竹の支柱の分解から始めましが、その竹でゴーヤの支柱を立てる作業もしています。椿や竹の剪定は、樹齢40年の大きな梅の木の実を収穫している途中で、手を着けてしまった作業です。徒長した梅の枝に着いた実は、枝ごと切り取って採りましたが、やがて脚立を立てる上で邪魔になる竹を切り取ったり側で茂っていた椿の枝を払ったりするようになり、ついには梅周り一帯の手入れをしてしまっていたわけです。

 晴読や雨読に没頭した一冊は、『中国十八年』という非売の本でした。友人に、中国貿易で鳴らした人がいますが、彼は退任記念に、100回を超える中国旅行から一書をものにし、「人生学士過程の卒論です」と添え書きして贈ってくれたのです。私には指折り数えるほどしか中国体験はありませんが、とても説得力を感じました。曰く、今の中国文明は、自前の近代化へのコンセプトや哲学を欠き、かつてのスローガン「自力更生」が消え、「他力更生」へと変貌している。理念を失った国の将来は危うく、不透明である。曰く、「生まれ変わる」ことと「化ける」ことは決定的に違う。「化けた」モノはいつか「化けの皮」がはがれる。文革や天安門でかいま見せた「人間への恐ろしく冷たい視線」は、いつか改革・開放路線と人民の利益の間に矛盾が生じる事態になったとき、再び「闇」の中に鋭く光るにちがいなく、この国では何に結びつくか見当もつかない。

 彼は、「西湖を見ずして死ぬなかれ」といわれる一周30kmほどの人工湖を仕事で幾度も訪ねるうちに、仲秋の名月に当たり、湖の中にある二つの小島で「日月潭(たん)」を望み、その日に食す月餅(げっぺい)を賞味しています。そして、現在の繁栄がバブルでないことを願い、全員がひとしく貧しかった頃の中国は、国全体がどこか「凛」とした雰囲気を持っていたが今は無い、と憂いています。

 菜園ではオクラの苗を植える畝の用意もすみ、夏を迎える準備はほぼ終わりました。キュウリの初物はすでに浅漬けにして賞味。伏見トウガラシの初物は明日にでも焼けそうです。インゲンマメも大きくなっています。トマトは青い実をつけ、3種のカボチャは蔓を伸ばし、すでに雌花をつけています。ゴーヤやモロヘイヤの苗は根づきました。コイモやヤーコン(アンデスポテト)は元気に芽を出し、薩摩芋やトウモロコシも順調です。冬季は、庭の端までスケスケに見通せていたのに、落葉樹の新緑がうっそうと茂った今は、その裏側の花さえ望めないほどです。そこかしこで、さまざまな小鳥がしきりにさえずっています。いつものように水・木は学校、土曜日は子ども連れの家族を対象とした環境勉強会などのために割きました。これから梅雨の晴れ間をぬいながら、サツキやツツジ、木犀や柘植(つげ)の刈り込みをします。「雨読」の本も積まれています。


安楽椅子は座敷の縁側にあります。そこから眺めた風景です。沙羅の木が、蕾を今にもほころびそうなまでに膨らませています。沙羅は白木蓮の木陰になっていますが、白木蓮と一緒になって夏の直射日光から座敷を守る役割をはたします。冬季はともに落葉し、数10メートル先にある小倉池まで見通せます。

夏に備えた工夫の一つが、庭のあちこちに配した幾つもの水鉢です。イタチやタヌキ、コジュウケイやヒヨ鳥などが水飲み場にする土に埋め込んだ鉢もありますが、多くは、このように炎天下に置いてあります。水の蒸発力と側の植物の蒸散力による気化熱で一帯を涼しくするためです。水鉢にわいたボウフラは、金魚やメダカが食べてくれます。

吊り鉢も清涼感を与えてくれます。これらの多くは冬越しする植物です。早春に一度刈り取り、新たに新芽を出させています。梅雨が明けたら、幾つかの風鈴をだし、風が通りよい窓先などに吊るします。

今年はグミが豊作で、さまざまな小鳥を呼んでいます。妻は、小鳥に食い荒らされる前に、そそくさと実を積んだり枝を切り取ったりしていました。グミが大好きだけど多忙なために採りにこれない友人に送るためでしょう。

裏庭の一角にイワタバコが生えています。その側に友人の庭から新たな色のイワタバコなど幾本かの苗が越してきました。垂直の崖ですから、当分は水が不足するに違いないと考え、竹を使って一工夫しました。雨を受けとめ、底に開けた細い穴から崖に水をしみ込ませます。
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