獺祭(だっさい)と折り合い 03/06/21
雨の多い週でした。晴れ間をみて庭に出るのですが、土がすっかり緩んでおり、草抜きぐらいしかできません。もちろん、伸びたトマトの枝を支柱にとめたりキュウリの蔓を紐でつり上げたりする定期的な作業はしました。一番メリハリのある作業は、温室でポットにオクラの種を、大きな鉢に綿の種をまいたことでしょうか。
今頃になって妻は私の足の親指が太いことに気づいたようです。実は若い頃、この二本の親指で爪先だって立てることが自慢だった、と話しました。相撲もそこそこ強かったのです。腕相撲ではかなり自信がありました。「それは私も知っています」と妻が相づちを打ちました。20年ほど昔の冬の出来事を思い出したようです。
かつて柔道の国家コーチとしてフランスに招聘された人が泊まりに来たことがあります。小柄だが強いということで選ばれた理由や、ドゴール大統領と握手をした話とかヘーシンクと手合わせした話などを聞いた後で、なぜか腕相撲をすることになったのです。体重では私をはるかの上回る彼は、「森さんが私に勝てたら、百万円あげますよ」と言いました。「もし私が負けたら?」と問い返すと、「千円でいいですよ」と鼻であしらわれました。ホーム炬燵に足を突っ込んで酒の杯を傾けていのですが、早速炬燵が土俵です。とてもスポーツマンシップに富んだ人でしたが、真っ赤になり、浮かせてはいけないはずの肘まで浮かせて抵抗しました。結局、私の勝ちで終わりました。
「私にも、ヒトにはちょっと負けない、と言えることがあるでしょうか」と妻が真面目な顔で問いますから、私は首を傾げて考えました。妻が自ら「強情とか」とヒントを出しましたので、私は「後片付けのまずさだ」と叫びました。妻は、それらは努力を要さないことだから自慢にはならない、と考えたようです。そこで話題を変えましたが、私は頭の中で、妻は調理の巧みさを自慢にしてよいのではないかと考えていました。あり合わせの食材を使って次から次と手早く調理する料理は、初めて試みるものが多いのに美味しいのです。もちろん私は妻に餌づけされ、妻の味付けに馴染まされた弱みかもしれませんが、幸せのバロメーターとして生涯を通していかに多く妻の手料理を味わえるかを挙げています。ひょっとしたら、この春から学校に出る日数を減らした理由は、妻の手料理を少しでも多く、まともな時間にとりたかったからかもしれません。問題はその後です。
近頃は展示会が続きますから、夕食がすむと妻に工房に行くことを勧め、私がよく風呂焚きを担当します。居間から風呂の焚口に行く時に台所の側を通りますが、いつも調理場はお祭りです。取り出した調味料はそのまま使った様々な鍋もそのまま、など獺祭(だっさい)です。一度妻に、「獺祭」の説明をしたことがあるのですが、「可愛い!」と喜んでもらっただけでお終いでした。
この雨で庭の木や草が好きなように伸びています。早く刈り込みや草刈りを始めないといけません。里山や里地など、人間もその一員として棲みつくビオトープは、それなりに折り合いをつける管理が求められます。というわけで、モクセイやツツジの刈り込みから手を着けましたが、週末は多くの時間を外出に割くことになりました。金曜は夕刻から半年ぶりに20年来の友と会って一献傾けました。これから休塾中のアイトワ塾生に誘われ、久しぶりに弘法さん(東寺の一帯に月に1度でる露店)に出掛けます。その後は、滋賀大学訪問です。いずれでも楽しい人とお会いできそうです。
この水鉢は玄関の前にありますが、お節料理に使うクワイを育てています。メダカを住まわさせて蚊が産みつける卵を食べてもらっていますが、時々水面にはびこる水草を半分ぐらい取り除きます。放っておけば、浮き草が一面にはびこってしまい、メダカを困らせるからです。
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イモリやサワガニが棲み、イトトンボが増殖するビオトープです。秋田の知人からもらった野ゼリや、崖にはゼンマイが育っています。この一帯は、ときどき除草します。放っておけばミゾソバなどが好きなようにはびこり、セリやゼンマイが育てない空間にしてしまいかねません。
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カボチャが元気に蔓をはびこらせています。放っておけばキウイフルーツの棚を占領してキウイを枯らしてしまいかねません。もちろんキウイも放っておけば好きなように蔓を伸ばしてしまいます。人間の都合で適度にカボチャやキウイの蔓を制御します。
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インゲンマメ(三度豆)や伏見トウガラシの収穫期に入りました。種から育てたスーヨー(四葉)キュウリの初物(細長い方)も食しました。インゲンマメの初物は、サッとゆでたごまあえになったのですが、採りたてのパリパリした歯触りを私は楽しめなくなりそうです。歯が弱くなったのでしょう。急いで歯科医に走ります。
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スーヨーキュウリの棚です。母が生きていたら、もうしばらくで好物の時期です。梅雨が明け、日照りでうまく育たず、曲がって細くなったのが採れると、朝漬けにしてコリコリと音をたてて食べるのが好きでした。妻もその味を覚えたのでしょうか、毎年この種を探してきます。
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白い木蓮には、早く大きくなって座敷のスダレの役割を果たしてもらいたいのですが、その下にあるワラビやヒラド、その側にある沙羅やコブシなどとうまく棲み分けてもらいたいとも思っています。だから木蓮が好き放題に茂らす枝を、適度に裁いています。
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