壬生菜と鳴戸金時 03/11/10
開墾はウドの株を掘り出して移植するのに難儀しましたから、1週間にわたって延べ10時間ほど費やし、ゆっくり進めました。その間にとても楽しい触れ合いがありました。教え子が旅行の途中で立ち寄ってくれたり、このサイトを開いているお父さんをもつ学生がご両親や妹さんを案内して来てくれたりしました。広島からすてきな女性の援軍を得ましたし、一度お迎えしたかった方にも訪ねていただきました。
援軍を得た庭掃除はとても楽しいものでした。朝の9時前から一緒に始め、ブロワーを使った落ち葉掃除の仕方や金属製サラエの使い方、あるいは厚鎌を使って竹の枝をさばくコツなどを伝授しましたが、とても飲み込みが早かったのです。だから10時のプリン、昼食の味噌ラーメン、3時の食パンのミミに自家製のイチジクジャムを塗ったトースト、その間の庭でもいでかぶりついた富有柿などに費やした時間の他は、5時過ぎまでシイタケのホダ木の天地返しも含めて様々な作業に没頭できました。
庭掃除が楽しかった理由はもう一つありました。お迎えしたい方に来ていただけることになっていたからです。壬生寺の貫主様ご夫妻です。初めてお目にかかったのはこの7月ですが、さるパーティで隣り合わせとなり、柔和なお顔と使い込まれた器用そうなごつい手に接し、すっかり心をひかれてしまったのです。その後2度も押しかけ、壬生菜の由来をうかがったり壬生狂言の舞台裏をご案内いただいたりしましたが、この度も庭をご案内しながらジックリと語らう時間をちょうだいしました。もっと早く存じ上げることができていたら、と残念に思っています。私の比ではないほど創造の喜びを大切にしておられるようですし、ご夫人はそれを暖かく見守る目をお持ちだと知ったからです。
菜園では水菜や壬生菜が順調に育っていますが、去年と同じ失敗を繰り返しそうで心配です。昨年の私は、いわば偽の種をつかまされたわけです。株が大きく太り、霜を幾度かかぶることによって柔らかくなる本来の品種と同じ名称なのに、葉が軟くて薄く、霜ですっかり駄目になってしまいました。この冬も本来の品種と同じ写真と説明が付いた種を買いましたが、怪しげです。本来の路地で育てる品種は、葉が厚くて巾が狭く、もっと色が濃くてしっかりしています。ハウスで年中栽培できる新品種の価値を私も十分理解しているのですが、なぜ平成水菜とか姫壬生菜などと新しい名を与えなかったかが疑問です。
その点、鳴戸金時は立派です。わが家でもこの夏は鳴戸金時を作ったのですが、姿形は同じでしたが味はさっぱりでした。同じ種芋の蔓から取った苗であっても、土地が異なれば異なる味の芋しかつけないのでしょう。だから鳴戸方面の農家は、鳴門市、松茂町、徳島市川内町など吉野川河口の海浜地帯で取れた高系14号の一種の芋だけに鳴戸金時の名前をつけ、とりわけ評価が高い里裏町産には「里むすめ」という名前をつけて売り出しています。こうすれば、名前は中身も保証しますから、期待して買った人をガッカリさせずに済むのではないでしょうか。
異常続きの庭でしたが、畑はすっかり冬景色になりました。弁慶は日向に出してあげても好物のマグロの刺身さえ食べませんから、ボツボツ冬眠でしょう。カエルの子どもたちは泉や水路でまだ頑張っていますが、風呂を沸かすのに一時間以上もかかるようになりました。まもなく薪ストーブを焚く季節ですが、壬生寺の貫主様に錆の治療法を教わりましたから、この冬休みの間に手当てをしようと思っています。
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