お屠蘇気分と、ノンヴァイオレント 04/01/05

おだやかな年末年始でした。庭掃除やガラス磨き、お墓や神棚の掃除、しめ縄やお煮しめ造り、餅つきやお鏡飾りなどを分担し合い、友人に送ってもらった年越し蕎麦を一緒に味わったあと、風呂につかってご近所の常寂光寺をはじめ遠近の除夜の鐘を聞き分けながら元旦を迎えました。この時期の薪風呂は焚き上げるまでに2時間半はかかりますから、38~39度から湯につかり、4243度になるまでじっくり温まります。

昨年最後の話題は「屠蘇」でした。妻が、「近頃は、お屠蘇をいただくお宅は減ったのでしょうか」と首をひねったからです。大きなスーパーで「お屠蘇ってなんですか」と、すべての店員に問い直され、かろうじて店長さんが、付録に屠蘇が着いた味醂があることを教えてくれたそうです。「お屠蘇気分は昔話ね」と妻は寂しそうでした。

落ち葉かきは大変でした。いつも落葉樹の葉がすっかり落ち切るまで楽しんだ後、一度にまとめて掻き取るところがあるのですが、そこがとりわけ大変でした。初雪が湿らせた葉が乾燥する機会がなかったために、重かったからです。十分に湿った落ち葉を掻きとって堆肥場に積み上げましたから、早く発酵し、よい腐葉土になることでしょう。

ガラス磨きにも力を入れました。温室や風除室とか仕事場のトップライトなどのガラスです。トップライトはデッキブラシで十分ですが、温室や風除湿は窓ガラスと同様の磨き方をしなければならないのに、手が届かない部分がたくさんありますから大変です。とりわけ、山葡萄の蔓を這わせている風除室は手がかかります。いったん蔓をめくってからガラスを磨き、蔓を剪定した上で元通りにガラスに乗せ直すわけですから。

ワラビ道の鉄柵も完成しました。この作業のおかげで、気になっていたセメントを用いる補修作業がすべて片付きました。コンクリートを固めて作った踏み石の隅が欠けた部分や旧玄関のアプローチに敷いた鉄平石のつなぎ目の補修、あるいは苔がむして滑りやすくなった踏み石の滑り止めなど、こまごました作業です。ついでに片付けると簡単ですし、「やった!」といった心境になれます。だから逆に、補修をし忘れた部分が残っていたことが後でわかると、残念このうえありません。妻は、これまでは後になってから教えて、私に悔しい思いをよくさせましたが、この度はなかったようです。

それにしても、イラクに行く自衛隊の人は気の毒です。首相は、自ら軍隊と認めた人たちを、イラクの人を殺しかねない武器を携帯させて戦場に派遣する。これは無茶苦茶です。私が隊員なら、行かざるを得ない事情を納得しても、「丸腰・平服」で行かせて欲しい。そして首相に、「人道支援に行くんですよ、どうして武器が要るのですか」と開き直ってほしい。さらに、「民間人では危険です。だから、国土防衛のために命を捧げる覚悟のできている人たちに行かせます。とはいえ、一人でも犠牲が出る事態になれば、直ちに全員を引き上げさせます」、と付け加えて欲しかった。今からでも遅くはない。

 それはともかく、私にとってはよい年明けとなりました。恒例の来客と歓談したり塾生が楽しい話題を届けてくれたりしたほかは、5日までほとんどの時間を次の本のキー打ちに費やし、脱稿することができたからです。暮に、庭仕事をしながら、頭の中は原稿の仕上げのことでいっぱいでしたから、一刻も早くキーボードの前に座りたかったのです。妻は、元日の喫茶店を担当しましたから、2日から人形創りに手を着けていました。

私たちは、21世紀はノンバイオレント(非暴力)の世紀にしなければ、と思っています。

 

 

落ち葉の上で、暮の27日に妻が撮影した写真です。近頃では、落ち葉をゴミと見る人が増えましたが、わが家ではすべての始まりはここにあり、と感じています。やがて野菜を育てる腐葉土になり、その過程でカブトムシが卵を産みつける温床となったり土造り担当のミミズの住処になったりします。この写真も、次の作品の誕生に結び付きます。

左の写真をクリックすると拡大します。

この暮も、恒例の嬉しい贈り物が多々ありました。この大好物の「でびらかれい」の干物は、商社時代の先輩の奥さんから送ってもらいました。この夏に、妻と四国の故郷にお訪ねした人ですが、そこは漁村でした。「でびら」の味は、商社時代に、広島方面出張で覚えました。私にとって、「でびら」と「あご」が魚の干物では双璧です。

しめ縄造りです。いつも「稲荷寿司」を造って駆けつけていた今は亡き塾生を偲びました。調理の名人だった彼がモデルにした稲荷寿司を、幹事が買ってきてくれたからです。他に、スイートポテトとあべかわ餅が興を添えました。ポテトはアイトワを喫茶店にしようと提案した女性が毎年下さるものだし、あべかわは庭の大根のおろしときなこで食しました。
ワラビ道に立てた鉄柵です。この夏には、この柵の有用性を目で確かめていただけることでしょう。毎年、このあたりで収穫するワラビで、季節の味を2度ばかり楽しみます。ワラビは長けると、小径をおおって通りにくくしていまいます。


風除室の屋根ガラスです。掃除後の写真右は、鉢植え観葉植物や種芋などを守る温室の役目のはたすための状態です。 こうした蔓の幹から、4月頃には新芽がたくさん出てガラス屋根を葉で覆い、夏には掃除前 左の状態になります。

この冬最後()の、異常を示す写真(元日に撮影)です。このスモモは、剪定を要する数少ない庭木の一本ですが、落葉せずに年を越しました。毛虫で丸裸になった後、晩夏に花を咲かせ、新たに出した葉が黄変した時点で大晦日になったわけです。現実は、外気が冬になったから、急いで黄変したのでしょう。手前のモクレン、コブシ、ハナモモ、ナツメなどはすべて丸裸です。

お鏡飾りのウラジロは裏山で採りました。みかんや干し柿など庭の産物を多用します。ものごころがついてからこの方、三が日はお屠蘇を欠かしたことがありません。両親がいたころと違って、清酒の割合を増やし、「やなぎかけ()」の様子だけ変えました。新年の挨拶を交わしながらいただきます。イセエビは例年、義妹のご主人が届けてくれます。