土木工事とスズメの子 04/05/16

一週間は2日続きの雨で始まり、久しぶりで2日続けてほとんどの時間を資料の整理や読書に費やしました。庭仕事といえば、雨の重みでワラビ道に垂れ下がった山椒やウコギの枝を、小降りの時をねらってさばいた程度ですし、来客も、過日海津大崎での花見で一緒だった人がひょっこり訪ねてくださったぐらいでした。でもその間に、少し悲しい出来事がありました。

 先週末に、妻が庭でスズメの雛を拾ったのです。毎年人形展示室の軒先の通気口で雛が孵りますが、そこから落ちたようです。私は、巣立ちに失敗した弱い雛と見て、拾ったところに返し、自然にゆだねるように促しました。しかし、妻はすぐに「ネコがいました」といってとって返して来ました。私も、「ひょっとしたら、この子は、無謀に巣立とうとした勇気のある子かもしれない」と考え直し、妻が世話をするにまかせました。雛は、妻だけでなく私の指にもとまり、妻が用意した「すり餌」を食べました。夕刻にはス-パーに出かけ、翌朝のすり餌に入れる刺身を買い、夜は、雛を小さな箱に入れて風呂の湯船の蓋(ふた)の上に置いて温めました。だが、かいなく、翌朝は冷たくなった雛を妻は木の根元に埋めています。

鶴之荘で住んでいる商社時代の同僚から礼状がきました。200坪単位で複数区画購入可能な分譲地であったことや、小林一三ではなく北田栄太郎が大正3年に売り出したことなどを知らせる資料が同封されていました。都会で働き、風光明媚な田園でゆったりと住む生き方を日本にも広めようとした開発であったとのことですが、今やその面影はない。とのことです。

火曜日は晴れ間も見られましたが、土が湿って重かったので畑仕事は避け、妻と山椒摘みをしたりミニ土木工事に熱中したりしました。翌水曜日も晴れましたが、土木工事が面白くなっていましたから庭仕事はそっちのけでした。先週から手をつけている崖の土留工事に伴なう排水工事に加え、樋の付け替えやワークルーム横の溝の整備にも手をだしました。もちろん、単なる樋の付け替えではなく、落ち葉掃除を容易にするミニ土木工事です。ワークルーム横の溝の工事は、泉からビオトープに水を引く水路の補修ですが、過日購入した廃材の石を生かしました。

木曜日は終日大雨でしたから、樋の点検や、講演のレジメ作りなどに生かしました。傘をさしてもビショ濡れになる雨でしたが、これを幸に家屋や庭を一巡して詰まった樋や水が溢れやすい水路などを点検したのです。前日に私が付け替えた樋は順調に機能していました。世の中には、「落ち葉で樋が詰まるから庭木はいらない」という人がいますが、それは大きな間違いです。掃除がし易い樋にしたり、樋のいらない構造にしたりしながら、樹木の恩恵を十分に享受して、住んでいるだけで豊かになったり健康になったり、近隣を潤したりする生き方を目指すべきです。これは私自身の体験や、周りの人や世界の動きを観察して得た一つの結論です。

金曜日は快晴となり、庭仕事を手伝いたいという人と左官屋さんがバイクで駆けつけ、2人とも午前中だけで帰って行きました。左官屋さんには母屋の「花流し」と呼んでいる炊事場や洗面とは別に第3の流しの水漏れを補修してもらい、バイクで通う女性にはパーキング場の草抜きとすでに始めている沐浴剤の収穫を手伝ってもらいました。午後、私は大工仕事に手を出しました。崖の排水工事をしている途中ですが、その工事で土が流れ込む心配がなくなった一角に頑丈な棚をつけたのです。庭仕事に用いる道具を収納しようと思っています。

土曜日の今日は、これから滋賀県立大学に出かけます。『次の生き方』で少し触れた『菜園家族』という活動の、2年目の初回の集まりに参加し、スピーカーを努めるためです。一緒に呼んでいただいた妻はモンゴル旅行に同道した人形を連れて行くようです。

 

さばいたウコギと山椒の徒長枝を、妻は二度目のウコギ飯と山椒味噌に生かしました。コゴミのおひたしや筍とワカメの煮付けも美味でした。翌朝は、ウドの若芽とコゴミを実にした味噌汁、ミズとシメジの炒め物、ヤマワサビの浅漬けなどが出ました。ヤマワサビは、刻んでサッと湯がいたうえでもみ、塩と昆布茶で味付けをし、密閉容器で一晩寝させますと辛味と香りに満ちた浅漬けができ上がります。

苺やエンドウマメの季節です。露地栽培している妻の3人の友だちから苺とスナックエンドウやキヌサヤエンドウを届けてもらいました。間もなくエンドウマメもいただけるでしょう。わが家では、ツタンカーメンのエンドウしか作っていないことをご存知の人たちが毎年届けてくださいます。
山椒摘みとその掃除に、2人は3時間を割きました。脚立を使ったりして2本の山椒の木から2キロほど摘み取り、掃除をしてみると実が1,7キロとれました。洗ってサッと湯がき、すぐさま冷凍して保存し、必要になったときに小出しにして用います。
奇妙なシイタケが採れました。4つのシイタケが一体化したのでしょうか。ホダ木を水に浸けて十分に湿らせたところ、その1本からこのシイタケが1本だけ生えました。今回のホダ木作りはどうやら乾燥させ過ぎてしまったために失敗したようです。

樋に詰まる落ち葉を掃除しやすくした工夫の一例です。古い樋を外したら、樋の底に流れ込んで溜まったドングリが、真っ暗な樋の底で発芽しては枯れる、ということを繰り返していたことがわかりました。その部分を開渠にして、樋が詰まり始めたらすぐにわかるようにして、すぐさま掃除するようにしたわけです。構造にご興味のある方はクリックしてください。

商社時代の先輩の奥さんから、四国の美味が届き、昨年お訪ねしたおりに散歩した浜を思い出しました。採りたてのモズクは、歯ごたえや舌触りから違います。すばらしいチリメン雑魚です。母はこの手づくり和三盆(わさんぼん)の甘味をなめたり苺にかけたりして楽しみながら育っています。

今年初めてツタンカーメンのエンドウマメを収穫しました。土曜日の朝は、この赤飯でしたから、私は心密かに「おめでとう」とつぶやきました。数日前に、妻は誕生日を迎えていたのですが、私には声に出せなかった言葉です。母から、男は女性が喜びそうな言葉を軽軽しく口にするものではない、と叩きこまれたせいでしょうか。