育児と本当の優しさや豊かさ 04/05/30

 日曜は少し緊張しました。今一番大切な問題、成人してからでは手遅れだと思われる教育問題に関われたからです。岐阜県保育研究大会に招かれ、800人もの保育園長さんや保母さんを相手に、「子育て支援から次世代育成支援へ」との講演をさせてもらったのです。「幼児は、そばの大人を真似ます。まず皆さんが幸せで心豊か人になってください」と切りだし、将来を託してもらえる「一隅を照らす人」を目指すように勧め、「旅人と、3人のレンガを積む人」の話を持ち出したり潜在能力の触発に力点をおいた保育事例を紹介したりしました。

 旅人が次々とレンガを積んでいる人に出くわし、「何をしているのですか」と尋ねると、三者三様の答え「レンガを積んでいます」「塀を造っています」「村の教会を創っています」が返ってきますが、あとの人ほど生き生きしていたという話です。問題は、とりわけ保育者は今、「教会」に代わる「次代の要請」をしっかりと見定めておく必要があるということです。また、マーク・トゥウェインは「教育とは、学校に邪魔されないで獲得すべきもの」と語っていますが、知識や技術を叩き込むよりも、どんな世になろうとも希望を見失わない気概を育んだり子どもたちの潜在能力を引き出す創造性を触発したりする方が大切ではないか、と訴えました。

 私は、45年前から植樹を始めましたが、30年前までは道行く子連れの母親に「勉強せんと、日曜まであんなことせんなんよ」とよく教材にされました。こうした工業化や高度経済成長などに目が眩んだ大人に囲まれていたら、私は遠き未来を見定めようとするクセなど身につけにくかったことでしょう。植樹は、木が育った時の姿、未来に夢を馳せさせるものです。転換期の今、明日は今日の延長線上にあると信じているような人に保育を委ねるのは心配です。それでは自然破壊や南北問題などに関わりつづける時代遅れの人にしてしまいかねません。

 嬉しい便りが多い1週間でした。先週の「菜園家族」でご一緒した人や京都新聞に載った私の「提言」を読んでもらえた人からの電話やハガキです。「苦難を愉しみに変え、成就すれば自信に結び付け、やがては誇りを育むような生き方、未来の方から微笑みかけてくる生き方を目指さなければいけないことが分かりました」との感想や、70年近く前に工業社会を揶揄した映画、『モダン・タイムス』の偉大さを思い知らせる手紙もありました。前回の週記を私が書いていた最中に記されたと思われるコラムが同封されていたのです。振り返れば、チャップリンは、本当の豊かさや幸せを求めた心優しい人であったはずなのに、当時のアメリカは疎外しています。この「穏健な人」を「危険な人」と見誤らせたアメリカの社会風潮が9・11の遠因ではないでしょうか。その意識にいまだに囚われ続けている人を『華氏911』は揶揄したのかもしれません。

 好天が続いた1週間でもありました。庭ではフキが茂り、淡竹の筍が出始めました。数本の筍と5`ほどのフキをとりましたが、そのついでにあちらこちらで自生しているヨモギも収穫しました。筍とフキは、先日冷凍した山椒を生かして佃煮にしました。ヨモギは干して沐浴剤の材料にします。すでに今年も沐浴剤つくりが始まっています。近頃は、毎夜のように初めて目にする小さな昆虫が部屋に忍び込んできて不思議なしぐさを見せてくれます。

 庭師や農夫も満喫した1週間でした。思えばこの2〜3ヶ月の間に、石工や大工、ペンキ屋や樋屋、電気屋や水道屋などの真似事をしました。コンクリートや石を切る道具だけは借りましたが、それも欲しくなりました。でも、妻は「また貸していただきましょう」といいます。溶接器を買い込んでいながら生かしていないからでしょう。これから、お世話になった幾組みかのご夫婦をお招きしてガーデンパーティを開こうとしていますが、お天気は大丈夫かな。

収穫したフキは、計量すると4.8キロありましたが、葉を切りとってみると2.3キロしか残りませんでした。初めて計量したのですが、収穫後を担当する妻は「葉の方が少し重いでしょう」と心得ていました、「それを煮込めば、かさは4分の1になるんだから」とも話していました。

エンドウマメのボートです。オモチャがなかった子どもの頃は、オモチャは自分で創って遊びまた。
浮かんだ姿を見たいといって、妻は水の入った器を用意しました。ツタンカーメンのエンドウマメを収穫し、ゆでて冷凍保存しました。もちろんサヤが濃い紫色の数本分は種用として残しています。サヤに緑色が差しますと、混血した証拠です。
嬉しい手紙でした。24日付け毎日新聞滋賀版の切り抜きが入っていました。『モダン・タイムス』のあら筋にご興味のある方はクリックしてください。次回の「菜園家族」の集いでは戦争好きの『独裁者』が上映されます。『華氏911』をご存知でない方はクリックしてください。

すでに沐浴剤の材料は収穫し始めており、ミントやドクダミなど4種が干しあがりつつあります。最初に収穫したスギナは失敗しました。雨模様の日が続くことを読まずに収穫し、徒労に終わらせたわけです。カビを生やしました。晴天の日の朝に収穫し、すぐにカラッと干さないといけません。

久しぶりでこの蝶が庭に遊びに来ました。アザミの花が大好きなのか、夢中で蜜を吸っていました。妻が羽根を広げさせようとして手を近づけますと、ひらひらと飛びあがるのですが、すぐにまたもとの花にとまっていました。中学生の頃に私は昆虫採取に凝っていましたが、その頃は私を見ると蝶はたちどころに逃げ去りました

京都新聞に意見を載せてもらいました。幼児期に、工業化が可能にした大量消費を幸せのバロメーターにするクセを身につけたら、その呪縛から抜け出すのは容易ではないようです。とりわけバブル時代に三つ子の魂を固めた人を短大生として迎えるみになって、その怖さを痛感させる人が多いことに驚かされたものです。

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滋賀県立大学小貫ゼミの卒業作品集を送ってもらいました。逞しい生き方を目指す19人の若者の論集ですが、小貫先生は論文の形式にこだわらず、「想い」を述べやすくしたようです。この19人の中には、創造性を育もうとする教育に馴染めず、「何を覚えたらよいのか、試験に出ることを教えてください」と訴え出る人はいないことでしょう。