石川県の旅とカラス対策 04/07/17

 久しぶりで日本海を見てきました。土曜日の朝、豪雨を予測する天気予報を気にしながら、わが家の軽四輪を知人に運転してもらって出立し、途中のICで妻が用意した巻き寿司とお稲荷さんをつまんだ他は一路旧街道をひた走り、4時間余りで辰口温泉のある松任(まっとう)市に着きました。しかし、足を延ばしてかほく市を訪ねています。そこは西田幾太郎の生地であり、記念館がつくられたばかりと聞いていたからです。この春、商社時代の友と「哲学の道」を散策していますが、そこはこの哲学者が好んで歩いた小径でした。さらに余勢をかうようにして知人は羽咋(はくい)市まで車を駆り、千里(ちり)浜の海岸を案内した上で辰口町の生家に連れていってくれました。そこで近くの公設温泉につかったり暖かい夕餉のもてなしを受けたりしたのですが、ご母堂が少し身体を痛めておられた関係で、すっかり妹さんご夫妻にお世話になりました。

 翌日曜日は好天で明けました。まず一人で朝の散歩に出かけたのですが、カラスよけのネットを被せたイチジクの木を見ました。戻ると妻は、朝食の準備をするご母堂を手伝っていました。食後、世界の少数民族にも造詣が深い知人のコレクションを見学したうえ、ご両親とお別れをし、心置きなく旅を続けました。前日の間に電話で京都は豪雨から免れた、と聞いていたからです。九谷焼の品定め、小松の「安宅の関」跡では「勧進帳」をしのび、加賀市では「一向宗」について語りあったり中谷宇吉郎の「雪の科学館」を見学したり、福井の丸岡ではざる蕎麦を、武生ではおろし蕎麦を食し、あとは骨董屋を横目で睨みながらひたすら車を飛ばしてもらい、わが家の最寄にある小学校に8時1分前に愛車を横付けにしてもらいました。

 終始運転を知人に引き受けてもらったおかげで参議院選投票所に駈け込めたのですが、私たち2人は最後の投票者となって拍手で迎えられ、無事投票を済ませました。その後、知人を住処まで送り届け、わが家に帰り着くと、まず水が切れた植木鉢が目に飛びこんできました。妻が夕食の準備をする間に、私は葉が幽霊の手のように垂れ下がった鉢植えに水をやったり、36時間もつながれっぱなしで絶食していた愛犬たちの餌やりと散歩を引き受けたりしました。

 家を2日空けただけですがトウガラシが本格的な収穫期に入っており、初成りのゴーヤができたりキュウリが大量にとれたりしました。カラス対策をして出た方のイチジクはほぼ無事でしたが、他方は襲われていました。アブラゼミが鳴き始めていましたしキリギリスの大合唱が始まっており、夏虫の鳴き声で庭は割れんばかりになっていました。火曜日は大垣に出かけて環境市民会議に参加して深夜に帰宅し、翌朝は羽化したばかりの大きなクロアゲハチョウが羽を干す姿を見かけ、大声で妻を呼んでいます。「あれは、きっとこの幼虫だったんだ」と教えたかったのです。「あれ」とは、風除室でこの春に見つけた6匹の大きな蝶の幼虫のことですが、餌にしていた吊り鉢の植物をすっかり食べ尽くしましたので外に連れ出してやっています。

 週の後半は、最寄の農協で防鳥ネットを買ったり、ホビーショップで金具を探したりしました。これまで妻は、玉ねぎやジャガイモなどを発泡スチロールの空き箱に入れていましたが、中が見えませんし乾燥しませんからよく腐らせたり発芽させたりしていました。だから中身が丸見えで乾燥し易い籠に入れて保管できるようにしたのです。防鳥ネットは、これまでテグスを張って守っていたイチジクのためです。また、風除室で用いる大きな壷も買い求めました。水を張っておき、ジョウロごと突っ込んで汲み取れるようにしたのですが、ホースでジョウロに注ぎ込むことから思えばとても簡便になりました。購入した品のお代は締めて4000円程度でしたが、どうして今まで気づかなかったのか、と残念でなりません。




軒下で育っているアサガオです。松任市を通過するときに、わが家に残してきたこの鉢植えに想いを馳せています。それは、出立前に近畿は豪雨との天気予報に接し、軒下に避難させただけでなく、松任市は加賀千代が「朝顔に つるべ取られて もらい水」と詠んだところだ、と知人に教えられたからでしょう。

座右の銘に「一日不作、一日不食」をあげた西田幾太郎が生きていたら、この大掛かりな記念館に対してどのような感想を述べたことでしょうか。私は哲学書を英語で読めばとても理解しやすいことを知ったり、哲学はフィロソフィア(知を愛する)から派生した言葉であり、欧米では子どもの時から慣れ親しんでいることを知ったりした時のことを振り返りながら、この記念館では人が集まらないだろうと心配しました。土・日でも100人ほどの来館、と聞かされました。
千里浜は、車を飛ばすことができるわが国では唯一の砂浜、とか。砂の粒子が細かいので沈まないのです。北欧をしばしば訪ねていた頃に、デンマークではヨーリンと呼ぶ砂浜へ2度ばかり日没を見に案内してもらっています。コペンハーゲンから車を駆ったわけですが、千里浜でも同様の日没が望めそうです。でも今回は曇っていました。
「おくもじ」です。往路の車中で知人に教えられた保存食の一種です。クキタチナ(薹が立ちはじめたアブラナ?)を塩漬けにしたもので、塩抜きをして用いるとか。強い興味を抱いた私のためにご近所から取り寄せてもらいました。知人のご尊父は、広辞苑を持ち出し、「おくもじ」とは女房詞で、「菜漬」転じて「菜漬飯」をいう、とある個所を指差されました。

中谷宇吉郎の「雪の科学館」を訪ねました。この建物は、雪の結晶に心ひかれた人を想って創られた施設だろうと感じました。同じ想いの人を呼び寄せるのでしょうか、賑わっていました。こんなところで「お茶の時間にしたいなあ」との衝動に駆られる喫茶店が併設されていましたが、昼食の時間になっていましたからあきらめました。

カラスにつつかれたイチジクはよい所どりをして、私の3時の軽食に用いるジャムに煮込んでもらいました。煮込めばたとえトリインフルエンザに冒されていたとしても心配はないでしょう。食い荒らされた分は小鳥の餌として残しました。トリインフルエンザに負けない小鳥になって欲しいと願います。

いも類や根菜などを保管しておく装置です。風通しのよい籠をぶら下げただけですが、中身を気づかずに腐らせたり芽を出させたりして無駄にする率を大幅に下げるに違いありません。私も少しは賢くなったのでしょうか、「注意を喚起する方式」ではなく、「不注意から生じる失策を減らす工夫」に頭を使うようになりました。