開発か破壊か創造か 04/10/30

  台風で荒れた庭を巡回する小径を、月曜日の午前中までかけて掃除しました。掻き集めた落ち枝などを「森の囲炉裏場」まで運び、太い幹や枝は残して囲炉裏で燃やし、一輪車一杯分の灰と、薪を幾束かつくりました。灰をふるい取った残りかすはパーキングの側にあるイチジクにやりました。このイチジクは裏庭のイチジクほどテッポウムシの被害を受けなかったので切り取っておらず、裏庭の方に出る新芽が育って実をつけ始めるまで頑張ってもらおうと思っています。

 月曜日の午後から、私にとっては大土木工事が始まりました。2年ほどかかりそうですから「大」というより「長期」と言った方が適切でしょう。畑の勾配を逆にして裏山から流れ込んでくる山水をこれまでとは逆の方向に流し去る造成工事です。まず畑の畝間の溝を深く掘り、掘り出した土で土手をつくり、明日にでも大雨が降っても大丈夫なようにしました。残る作業は、畝を耕し直すたびに低くする部分の畝の土を高くする部分に移動させ、畑の勾配を逆にすることです。

 反省しています。40年ほど前に、山水の涵養地が不法に宅地開発されかけたときに止めておけば、こんな事態を招かずとも済んでいたからです。しかし、隣地のことでしたし、当時の社会は「開発」に対して寛大でしたから、宅地開発反対の活動をしても社会の共感を得られそうにないと思い、手控えました。もしそうしておれば、山水を暴れさせないだけでなく、今頃は小倉池の水は綺麗になり、夏にアオコを生じさせるような事態もなくせていたことでしょう。

 こうした反省をしていた時に、新潟では地震で幾多の土砂崩れが生じました。だからその前の台風23号による京都府や兵庫県北部などの洪水にも思いを馳せました。被災者には本当に気の毒ですが、まさかと思っていたことが多々生じていたはずです。それは私たちが「開発」だと思っていたこと、たとえば道路やダムの開発とか樹種を変える植樹活動などが、自然の側から見ると「破壊」だよ、と訴える悲鳴のように聞こえたからです。木の実や川魚などが減って熊やイノシシなどは棲みにくくなったでしょう。わが家ではこの1〜2年、夏場には毎日のように初めて目にする昆虫に出会っています。暖地からの移動かもしれません。目先の利益を求めた開発が、これまでは50年に一度と考えていた災害を、5年に一度とかの割で生じさせかねないとも限りません。

 科学の弊害でしょう。科学は大切ですが、科学を経済や戦争の僕(しもべ)にしてはいけないと思います。つまり、解明できたほんの部分的な知識と開発した技術を身勝手に駆使し、経済や戦争を有利に展開しようとする過程で、深遠なる自然を破壊していたのではないでしょうか。科学が発達している国や地域ほど環境破壊はもとより人心の荒廃まで進めているように見えます。

 嬉しい本との出会いが多い週でもありました。処女作や第4作の編集人から一書をいただいたり、そこで取り上げた社会変動に大きく関わっていたデザイナーの手記を読んだりしたのです。処女作では、1960年代までの服飾は「上の風、下之に倣う」でしたが、工業国では「下の風、上之に倣う」になっていることを指摘し、それが何を示唆、あるいは予告しているのかから紐解いています。アイトワ塾では、処女作の検証はプロローグを残すのみとなりましたが、今のところは胸をなでおろしています。3〜4回で済ます予定でしたが、1年もかけてしまったことは、今読んでも楽しめたからではないでしょうか。問題は、「プロローグ」でかくあって欲しいとの願いを述べていますが、その願いの妥当性と、それに国や企業などが沿えている否かということです。

 これまでのような破壊と背中合わせの開発に狂奔し、消費の増大によって幸せや豊かさを追い求め続けていてはいけないと思います。「次の生き方」は、最小の消費で最大の幸せや豊かさを求める方向に転換すべきです。そのキーワードの一つは、消費から創造への転換でしょう。


週の初めに届いた一書です。処女作の編集者が、まるで定年退職記念のような形で出された著作です。16年前のことですが、処女作の編集過程で、「森さん、死ぬ気じゃないでしょうね」とこの人に心配をかけています。サラリーマンをやめた私は、私なりに処女作で人生のケジメをつけようとしていたのですが、それが伝わったのかもしれません。

山手のお隣から流れこんでくる水を捨て去るために、畝間の溝を水路として生かすために深く掘り下げた状態です。その分だけ10cm〜20cmほど畝が高くなっています。しかし、野菜の作り方は16年前に処女作の編集者に見てもらった時と変わっていません。1本の畝を2〜3m毎に区切るようにして異なる作物を作っています。
新たに設けた土手です。溝を深くするだけでなく、これまで流れていた低い部分に水が流れて行かないようにするためです。これから、この土手の高さにあわせて畑の低い部分をかさあげしますが、まず通路だけかさ上げし、土が固まるまでにぬかるまないように踏み石を並べました。
かつて顧問をしていた会社から冊子が届きました。手がけられた屋上庭園の数々が紹介されています。自分が食べる食べ物や飲む水と同様に、吸う空気にも心を払いたいものです。いわば外部の肺を大切にしていると、健康になったり、冷暖房効果を高めたり、気候を穏やかにしたりするだけでなく、ストレスも減らしてくれるのではないでしょうか。

先週訪ねてもらった若きアーチストの絵葉書を、アイトワのワークショップでも取り扱い始めました。この女性が旅行先などで写真を撮り、自ら手作りしたという絵葉書です。この絵葉書を用いて、アイトワのテラスから、「愛とは?」と問いかけたり語りかけたりする便りを出していただける人が大勢いらっしゃるかもしれません。

今週はアメリカの陶芸家の訪問も受けました。益子で陶芸の修行をしたとのことですが、ペンシルベニア州にある自宅には登り窯があるそうです。日本での個展のための来日とのことでしたが、いつの日にかアイトワの展示室でも開催してもらえるかもしれません。お土産にいただい作品を、妻は重宝しそうです。

週末に送られてきた一書です。『このままでいいんですか もうひとつの生き方を求めて』の編集者は、深遠なる自然や人間の不思議さなどに触れる訳書を次々と手がけておられ、いつも目から鱗が落ちる喜びを与えられています。この本には、希望を抱くことが病状まで軽くする事例なども盛り込まれていそうです。