町衆の心意気と日本の役割 04/11/15

 森の囲炉裏場での楽しい歓談から週が明けました。この春、赤いヤマボウシを下さった女性が、友達と一緒に若い庭師夫妻を案内して来てくださったのです。時間を忘れるほど話が弾んだのですが、4人とも拙著の愛読者だったことを知り、得心しました。お互いに、落ち葉をゴミと見たり土を汚いと思ったりしないし、木や森は自分たちの外部の肺だと考えている人たちでしょう。この歓談の間も手を休めずに、講演用のCDロムを作りに来てくれた友は、講演を1時間半でまとめられるように12時間も割き、日曜日を台無しにして、作成してくれました。

 月曜と火曜はほぼ終日庭に関わることができました。畑では、麦まきをしたりエンドウマメの種をポットに蒔いたりしました。庭では、「石畳の道」と呼ぶことにする道の造作に手をつけたり、喫茶店の入り口にいたる階段道の脇に、石組みの小さな花壇を完成させたり、反対側のアーチ型の竹柵を青竹で作り直したりしました。食卓では、頂き物のラ・フランスを賞味しただけでなく、ラディッシュの葉の食し方を試したり初収穫のアカイモを食したりしたのです。

 今年のラディッシュは失敗です。窒素肥料が多過ぎたのでしょうか葉が青菜のように茂り、肝心の赤い玉をうまく結ばないのです。だから、葉を食する工夫をし始めたわけです。朝食の炒め物は成功でした。麦まきは半世紀ぶりです。高知から訪ねてくださった人の麦の種です。私はトーモロコシや豆類しか穀物を作ったことがないので、麦を一度育てたかったのです。私の生涯最初の畑仕事は、5歳の時の麦踏みです。数百坪にわたって母がまいた麦の新芽を踏む仕事でした。

 水曜日から出ずっぱりのようなことになりました。普段は、訪ねていただく仕事や庭仕事の間に出張など出かける用事を入れるようにしているのですが、このたびは、市の委員会、大阪の顧問先での企画会議、長岡京市の大学や京都商工会議所での講演などが重なり、しかも夜は夜で友と歓談する時間を挟んだり京都の先生方や企業の幹部が集うサークルの飲み会に顔を出したりしたためです。週の締めくくりは、アイトワ塾でした。

 大学での講演は、空間デザインを専攻する2年生から4年生までの学生が対象でした。この特演で人生目標を見定める若者が現れないとも限りませんから神経を使いました。後で「先生、握手をしてください」という女子学生がいました。京都商工会議所での講演は、企業の社会的責任がテーマでしたから6年前に『「想い」を売る会社』を通してその紹介をした時のことを思い出しました。顧客満足(CS)も、『人と地球に優しい企業』で訴えてから何年か後に騒がれています。

 友とは「芸術センター」で会したのですが、京都の町衆が明治2(1869)年に開校させた明倫小学校が活かされていました。1931年に再建した茶室をかねた和室もある建物ですが、子どもや教育に対する町衆の期待や、小学生や教師に対するその敬意の念が読み取れそうでした。近く妻を案内し、教室跡の喫茶室で、友に勧められたココアを振舞いたいと思います。

 アメリカ軍はファルージャを破壊しています。小泉さんは「復興支援」であることを強調し、肝心のところで手を引いたら「イラクの人々」はどう思うか、といった論調で国会答弁を切り抜けましたが、早くスペインのように引き上げるべきです。さもなければ、事後ファルージャの復興も本当に引き受けないと、アメリカの尻馬に乗り「破壊支援」をしていたような印象をイラク人に与え、これまで築いてきたアラブ諸国の日本への好印象をつぶしかねません。コートジボアールでも酷いことが生じています。そこでフランスはこれまでに何をしてきたのでしょうか。日本は、憲法9条を生かし、いかなる戦争も否定すべきです。それが本来の役割、米合衆国や欧州連合などと並び称せられるような東洋連合の構築を可能にさせるのではないでしょうか。


門扉からオープンテラスにいたる階段道の脇に、小さな石組みの花壇を完成させました。腐葉土をたっぷり入れて、チューリップの球根を植えつけましたが、チューリップが咲くまでの間を飾るビオラとサクラソウの苗も植えました。用いた石は、もちろん建築廃材です。

大きなシイタケがとれました。取り立てを焼いて、橙や酢橘を絞りこんだ三杯酢で食すると絶品です。月曜日の早朝、妻に誘われて庭に出ますと、シイタケの胞子が空中を漂っていました。妻は過去に「この大掛かりな光景」を目の当たりにしており、その情景は今、一文となって印刷所で刷られている最中です。このシイタケは、妻が知人のお宅に運びました。ご主人は病床です。
「石畳の道」と呼ぶことにした温室の南側を走る道です。この先に「イノシシスロープ」が続きますが、過日その坂に石畳を敷いています。写真は、石を仮に並べただけの状態で、これから土を掘って石を半分ぐらい埋め込まなければなりません。石と石の間にはタンポポを生やそうと考えています。今、タンポポの新芽が、サラダにすると美味しい時期です。
青竹で作り直した竹のアーチです。昨年の作り方は失敗でした。竹を割ってアーチにしただけでは、竹の弾力と太陽光線の悪戯でしょうが、次第に中央で折れた三角形に近い形になります。紫外線をまともに受けるアーチの中央が弱り、そこに弾力が集中するのでしょう。だから、いつまでもきれいな円弧状を保つように、両サイドにむかって竹を薄く、かつ狭く削るなど、細工を施しました。

京都芸術センター、明倫小学校の一角です。当時の人は、子どもを「小さな大人」として扱っていたのかもしれません。子どもがはしゃぐ空間ではありません。近頃は、ディズニーランドのように何もかもが「大きな子ども」を対象としたような世の中になっているようで心配です。

写真をクリックすると京都芸術センターの詳細ページにリンクします。

アイトワのオープンカフェにある水槽で、水草が珍しい花のつけ方をしました。白いゼンマイのようなものが水槽の底に落ちている、と思って良く見ると、先に蕾がついていました。2cmほどだった白いコイルが次第に伸び、つぼみを水面に出そうとしているのでしょう。もしそうだとすれば、この水槽は深すぎで、可哀想です。

今の畑には、夏野菜の残りのトウガラシ。間もなく収穫するヤーコン、コイモ、アカイモ、ヤムイモ、百合ね、ウコン。冬野菜の白菜、人参、日の菜、大根、花菜、ラデッシュ、ブロッコリ、レタス、ホウレンソウ、トウタイサイ、壬生菜、ネギ、ワケギ、葉ニンニクの他に、ニラ、花が咲くラッキョウ、コーンフリ、いつでも収穫できるホースラディッシュ、実を結びつつあるエゴマ、収穫を始めている小松菜、コカブ、自然生えの水菜などの混血野菜があります。