「人と地球にやさしい企業とは」 環境の世紀を生き抜くには「人と地球にやさしい企業」にならなければいけませんが、裏返していえばそれは「自分たちには厳しい企業」にならなければいけないことを示しています。だから、その厳しさが従業員にとっては誇りに、経営者にとっては自信に、社会にとっては存在意義になるようにしなければいけないのです。 同名の著書を私は1990年に講談社から出しましたが、これが環境問題に真摯に取り組むことが利益の源泉になることや、顧客満足(CS)の重視が必須になることを指摘した日本で最初の本になりました。当時はまだ、「環境で飯が食えるか」とうそぶく経営者が大半でしたし、消費者も多くが環境問題には無関心でした。 消費者の中には一瞬で目覚め、行動を改める人がいます。それを賢い消費者と見ていますが、その数は数%までは徐々にしか増えませんが、その後はファッションのように急増するのが常です。そこで1992年に『このままでいいんですか もうひとつの生き方を求めて』を平凡社から出し、賢い消費者に対する理解と対応の必要性を呼びかけました。 その後、CSが話題となったり、「環境を無視していたのでは飯が食えなくなりそうだ」との声がささやかれたりするようになった1998年に、『「想い」を売る会社』を日本経済新聞社から出しています。最早「モノの良し悪し」を競っておればすむ時代ではなく、「企業自体の良し悪し」を競わなければいけない時代になった、との訴えでした。これが今日話題の「企業の社会的責任」を採り上げた日本で最初に本だといわれています。 大量生産を直線的に大量廃棄に結びつけるやり方は、資源を枯渇させ、ゴミを増大させるだけでなく、地球温暖化や家庭崩壊まで生じさせており、最早限界に達しています。また、お金のために情熱を傾ける人は次第に減っていますし、そのような人を相手にすることは自ら苦難を抱え込むようなものです。逆に、自分たちの未来や子どもの将来を明るくするために情熱を傾ける賢い人を大切にしたいものです。たとえ当初は少数であれ、賢い人を相手にするだけでやっていけるところに中小企業の利点があるのです。 これからは「あれもこれも」と欲望を解放する時代ではなく、最小の消費で最大の豊かさを求めて「あれか、これか」を厳選しなければならない時代です。こうした時代を切り開く人や企業のあり方を、平凡社から著した近著『次の生き方 エコから始まる仕事と暮らし』では取り上げています。人はモノやサービスそのものを求めているのではなく、それらを通して幸せとか安らぎや自信などを得ることを求めています。その期待に応えるために厳しくなることによって、従業員には誇りを、経営者には自信を、社会には存在意義を気づかせたり抱かせたりするのです。一瞬の目覚めで意識を変え、行動に移せる賢い消費者に対応するために、着実な努力を傾けようではありませんか。
|