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アイトワ循環図

真の横の関係を 05/05/09

 10日ほどフランスを訪ねてきました。基点にしたパリでは白いアスパラガスを堪能しました。絹織物産業で繁栄したフランス第二の都市リヨンとルイ11世時代には首都になったことがあり今はロワール古城めぐりの起点になっているツールは高速列車TGVで、高層の木造家並が見事で世界遺産に指定されている街トロワと道具市が開かれたビエーブルは在来線で訪ねました。総計列車で2000`ほど走り、200`余も歩きに歩き、急ぎ足で2日の夜に帰国しました。

 翌朝は早めに起き、訳があって庭を見て回わりました。ポットで苗を育てたキュウリやカボチャだけでなく、伏見トウガラシやトマトも苗を買って植えつけてあり、これら夏野菜の畝には庭や表の道の掃除で出た落ち葉で乾燥を防ぐマルチングがほどこされていました。個展の追い込み中だった妻は目が回る思いをしたことでしょう。ツタンカーメンのエンドウマメは紫色のサヤをつけ、麦が穂を、ニンジンが芽を出していました。もちろん野草も好きなように伸びています。

 フランスの旅は文化を花開かせた道具が研究目的でした。それは文明の賜物でもある機械との差異を考えさせがちですから、帰途のエコノミークラスの座席で不思議な心境にされました。イヤホンからヨハン・シュトラウスの皇帝円舞曲が流れはじめたときのことでした。これまでフランスなどを仕事で数え切れないほど訪ねていますが、そのビジネスクラスやファーストクラスでの旅が薄っぺらに感じられたのです。ファッションに関係した仕事でしたから、目や視野を狭められていたようです。ビエーブルの道具の博物館や市でフランスの大工や石工、農夫や洗濯女などが用いていた道具に触れ、それらの重くて大きな道具を操ってきた人たちを想い、それらの道具の説明をしたり売ったりする親切で実直そうな人たちと触れ合い、視界を広げられていたことに気付かされたのです。一握りの貴族階級が競い合いながら花開かせた特殊な空間に閉じ込められていた目が、いたわりあったり助け合ったりしながら肩を寄せ合って生きてきた無数の心優しい人たちを実感したおかげで、おおらかに解放されたのでしょう。

 同道した仲間を後に急ぎ足で帰国したのは、翌日から取材予定が入っていたからです。私たち夫婦の生活がNHK総合の番組「生活ホットモーニング」で採り上げられることになりました。おかげで時差ボケなどしているヒマがなく、太い木も鉞で見事に割れました。消費より創造に豊かさを見出し、「愛」のあり方を見直そうとしている私たちの姿がどのように収録されるのか、気になります。放映予定は12日と19日の2回、9時半からのワンランクアップの生き方です。

 これまでの社会は「貴族と庶民」とか「企業と従業員」など上下の関係を大切にしてきましたが、これからは家族とか仲間などの真の横関係が大切になるでしょう。それは本当のいたわりあいとか愛とは何かを真剣に見つめ直させるはずです。世界で最初に産業革命に成功し、浮かれていた英国では、母の手から息子を解放する活動さえが生じています。母が思う愛の手が、父の目には悪魔の手に見えたのでしょう。同様の見方を当時の米国大統領もしていたようで、自ら会長になって母の手から息子を離すためにボーイスカウト活動を米国に導入しています。

 大丸京都店で妻の個展が始まりました。留守番の私は友人の世話で新しい野菜の苗を手に入れて植えつけました。「京唐菜」という4年前に開発され、まだ市販されていない苗です。「ラファノ・プラシタ」という最近開発された野菜を、シーズン晩期ですが土産にもらい、試食しました。九州から今年も灰汁巻きを届けてもらいました。顧問先の要人との打ち合わせも重ねました。これからアイトワ塾の仲間と週末の合宿に出かけます。恒例の軍鶏のすき焼きが出る民宿で、動物生態学に詳しい人の講義を受けます。アイトワの庭でスズランが咲いています。

パリの市場に並んでいた白アスパラガスです。ドカッと買い込み、基地にしたパリのアパートに持ち帰り、旅仲間の調理で賞味しました。離仏した5月1日は男性から女性に、たとえば夫から妻に、父から娘に、息子から母になど、スズランを贈る日でした。

ビエーブルでの道具市の一コマです。石造りの巨大な建物や木造8階建ての家並みやサボ(木靴)とか回り階段などの曲面が多い造作が、あるいは広大な農地や果樹園などの運営が、はたまた大きな牛や馬の解体やなめしなどが、こうした道具を用いる人の手で繰り広げられていたわけです。ご興味のある方は写真をクリックしてください。

リヨンにはローマ時代の遺跡もありましたが、しばしこの円形劇場の階段席に座って脚を休めています。とにかく日に6時間ほどてくてく歩き、道の片隅にある道具を見つけたり、樋や軒先などに施された加工を見たりしてそれを可能にした道具を想ったり探したりして歩いたのです。
トロワの街並みです。木組みの高層住宅ですが、一階より二階が飛び出しており、さらに上階が張り出した建物がよく見かけられました。きっと妻は、こうした高層階には住みたがらないと思います。彼女は平屋かせいぜいが二階どまりの家屋が望みです。他の町並みにご興味のある方は写真をクリックしてください。
わが国の新幹線にあたるTGVも在来の郊外線も、乗客はこの機械で乗車券に乗車証明を印字するだけで、乗るときも降りるときも日本のような改札口や改札はありません。車中でたまに検札員が回ってくる程度です。わが国のJRは、国営のときはひたすら乗客の安全性を謳って赤字を溜め込み、民営化すると一転して「儲け」を標榜したりしていますが、大丈夫でしょうか。

丸太を切る時に用いる台です。NHKの取材班に、風呂に焚く薪造りや風呂を焚くところも見てもらいましたが、その記念に作りました。この道具を造るところや使うところは収録してもらえませんでした。きゃしゃな作りですが大事に使って生涯の友にしたいと思っています。

2新野菜「ラファノ・プラシタ」です。プラシタはアブラナ科の学名とのこと。野菜は「花芽が一番糖分など栄養分に富み、美味しい」から、次々と写真のような花芽を吹く品種を開発中とか。わが家では11月半ばの花菜から5月初めまで収穫できるダイコンの花芽まで、さまざまな野菜の花芽を半年にわたって楽しんできましたので、「なるほど」と得心しました。