ウイリアム・モリス

 

 ウイリアム・モリスは、世界で最初に産業革命に成功した国イギリスで、機械化が急速に進んでいた150年以上も前に、工業化の弊害の一つとして、古代の奴隷や中世の農奴よりも惨めな賃金労働者を生み出しかねないことを恐れています。だから工芸運動を起こし、オリジナリティに富んだ技能を独自の信用の下に活動する職人を見直し、職人が日常生活に美的価値を付加する社会を夢見ています。つまり勤労や日常生活の芸術化です。つまり金儲けや生をつなぐための手段ではなく、プロセス自体を楽しむ生き方や生活の尊重であり提唱です。

 だが世界は逆に工業化を押し進めてしまい、コピーを氾濫させる国を先進国と思う人を増やしてしまいます。コピーは、お金さえ出せば誰にでも同じものが手に入ります。それが拝金思想を蔓延させ、挙句の果てが「儲ける勝ち」と豪語する人を勝ち組と考えたり、リストラにおののく賃金労働者を増やしたりしたわけです。

 今日の日本は(自動販売機を世界で最も普及させ、コンビニエンスストアーを日常生活に組み込ませた唯一の国になるなど、つまり)モリスが理想とした(オリジナルと職人を尊ぶ)社会とは対極の社会を生み出した典型的な国になっています。

 資源枯渇化などを睨めば、資源小国であるわが国はいずれは破綻が予見されるこれまでの生き方から急いで脱却し、千利休やウイリアム・モリスを見直す新しい社会に転換して見せるべきでしょう。そこに次の繁栄が待っていたことが、やがて明らかになるでしょう。