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魂が命じるままに 06/02/12

 なぜかこのところエコライフガーデンの見学希望者が増えました。この庭の本質を発見しようとする見学なのかもしれません。私は、自然のシステムを生かして自活力を高めようとする生活空間作りの過程にこそ、真の生きる喜びや誇りが見出せるに違いない、と考えてきました。

 だからわが家では、自分たちの手で汚水施設を掃除する作業も重視しており、優先順位を高くしています。障子や襖の張替えをする時間がなくて外注することがあっても、トイレの排水施設は二人で管理をしてきました。近年では、喫茶店の分も、観光シーズンに入る前に定期的に夫婦で掃除をしています。それには次のようなエピソードを伴っています。

 15年ほど前のことでした。喫茶店のトイレを詰まらせ、妻は急いで業者を呼び、掃除をしてもらっています。その時にパイプと排水槽とのつなぎ目に問題がある、と気付かされました。わが家は、ゴミと同様に排水も分別したくて森のような居を構え、地下に幾筋もの下水管を張り巡らせてきました。ところが、木が栄養分を求めて根を忍び込ませ、詰まらせかねないのです。プラスチックの配水管には問題がないのですが、コンクリートの排水槽とのつなぎ目に問題があったわけです。プラスチックとコンクリートを完璧につなぐ接着剤がないためです。

 その時に、掃除に来てもらった初老の男性に妻は心を打たれています。お金のためなら何でもしかねない人や人の弱みに付け込みかねない人が多い世にあって、そうした一面をまったく感じさせない人であったようです。なぜかその後、妻は自分で掃除をするようになりました。私は「その人の仕事を減らすことにならないか」との疑問を呈しながら、手伝うようになりました。それは中国旅行から帰って間なしのことで、四川省での予期せぬ体験を思い出したからです。

 四川省の峨眉山で、細くて厳しい山道を歩きましたが、人をタンカで運ぶような駕籠屋が列をなして待ち受けていたのです。駕籠屋は「中日友好のために」と迫り、乗るか否かで私は根負けをしかけました。そのときに、愛麗という聡明なガイドは「父や兄にさせたくない仕事です」といって断らせたのです。仕事や出自に貴賎はないと私は思いますし、多くのガイドは乗せたがるのに、と私はガイドに疑問を感じました。すかさず彼女は「中日友好のためと誘われたら、あなたはどのような誘いにも乗るのですか」「この人たちが女性に生まれていたら、どのような仕事をしていたのでしょうか」と迫りました。厳しい山道を歩きながら、私は取りとめもないことまで考えました。何が弱いものいじめになるのか。人間は、侵略戦争という組織的殺人を命じた人を軍神とあがめながら、人間のみが作りだした失業者をなぜ蔑むのか、など。当時の中国では、文革の陰がまだ色濃く残っており、インテリがとても冷遇されていました。

 わが家では、私たち家族の屎尿は私が汲み出し、家族の健康を推し量ったり森づくりに生かしたりしながら自然との対話をしてきました。私が多忙なときは妻の魂に火をつけたいと願い、妻に引き受けさせています。ぼんやりと過ごしていたら、持って生まれていながら表に出さず終まいになりかねないものがある、と思っているからです。ですから、妻が喫茶店の運営にも手を染め、心優しい掃除夫と出合ったときから喫茶店の汚水施設の掃除に手を付けましたが、私は妻が魂に命じられて始めたように感じて、とても逞しく思っています。

 その逆のケースは、酒池肉林に陥れられたトルコの昔の王様たちではないでしょうか。重臣が意図的に造ったシカケ、すべての動物が共有している弱みをつく魅惑的なシカケにはまったことに気付かず、もっともっとと欲を張ることに終始していた、と聴いたことがあります。それが、人間のみに許された創造能力を健全に発揮する機会を奪っていたようだ、と私は見ています。



かつてトルコの王様や王子様を夢中にさせたオダリスクがたむろする空間を、アングルはテーマに選んでいます。出来の悪い権力者は恐ろしいものです。悪しき権力者となりかねない人を、その気にさせないために、賢き重臣たちが考え出したシカケの一端でしょう。

排水パイプに忍び込んだ木の根です。地下水を溜める水槽の水を生かし、乾燥していた一角を潤すために、小さな穴を開けたプラスチックパイプを地下に埋め込んだことがあります。その穴から木の根がパイプに忍び込み、詰まらせたのです。あとから考えると当然のことですが、自然と対峙してみないと気付けないことが多々あります。
庭のところどころにあるこうした積み石の下に、居宅用汚水パイプの枡が隠されています。居宅の方は、トイレが詰まってから、目星をつけたところから順に積み石をはずし、蓋を開け、掃除をします。屎尿を肥料にする作業の一環です。おかげで断水や停電で不便を感じるトイレから解放されています。

4つのマンホールは、喫茶や人形教室用の3つ(厨房用、雨水用、トイレ用)と、居宅用の1つ(合成洗剤などを使う台所など用)です。ここまでは喫茶や人形教室用の排水も分別していますが、ここから後は市の下水管に一緒に流し込んでいます。市も排水を分別して、水処理や再資源化を容易にすべきです。
良寛の詩碑建立報告会の案内状です。柳田先生の『沙門良寛』や『未来からの禅』などの著作に触れ、私は何かに気付かされたように記憶しています。

主催した柳田先生と四川省の峨眉山で合流しました。先生たち一行は船旅でしたが、あとを追うようにして私は飛行機で出かけ、敦厚まで足を伸ばした旅の途中で、詩碑を建立する活動のために一時的に一行と合流しています。

敦煌の莫高窟では3人目のガイドがつきました。中国旅行のためのガイド、敦煌でのガイド、莫高窟専用のガイドです。敦煌と莫高窟のガイドはみやげ物などをしきりに買わせようとしました。愛麗さんは、真に中国のためになることは何かと考えながら、私がいかに反応するかを観察していたに違いありません。