国を挙げて取り組むべき課題
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この収益第一主義の態度を、わが国の行政や事業者が不自然だと気付かない限り、観光立国などありえないと思います。だから、わが国は、海外旅行の出国者数は世界5位でありながら、入国者数は35位に甘んじており、観光収支を4兆円近い赤字にさせているのでしょう。 ニュージーランドでは、全国土から美しい散歩道や楽しい山登りルート、あるいは舟遊びが出来る入江などを選び出し、観光立国を打ち出しています。だから、国を挙げて国土を慈しみ、美しい水や空気を誇る国土であるように努めたり、山や海などでの遭難者は国が無償で救助したりしています。また、土地の相続税は免除です。緑豊かな景観を保ち続けようとする人にとって、地価の上昇や地価にスライドする相続税や固定資産税は大きな負担になるからです。慈しみ続けたいと思っても売らざるを得ない立場に追い込みかねない、と見ているようです。地価の上昇は、利ざやを稼いで売り飛ばそうとする人を喜ばせるだけで。土地を慈しみの対象ではなく、不労所得の対象にさせてしまい、景観を破壊させかねないからでしょう。 フランスでは、パリは土地の私有権を認めておらず、観光都市であることを誇り、年間海外から7000万人もの観光客を迎え入れています。それは、許諾された使い方をして繁栄すれば、使用権を高く転売できるようにして、自助努力に報いるやり方が可能にしているようです。喫茶店のウエーターも、能力次第で担当する席を増やすことが出来ますし、その利権の転売を許しています。努力には報い、好き勝手は許さないシステムと見てよいでしょう。 ドイツは環境政策に熱心で、農地を美しくたもつことにも熱心です。それは、農地は人間の食料を生み出すだけではなくすべての生物にとって大切な空間だと位置づけ、都市の人にも農地を大切にする心を養わせるように努めています。たとえば、農家がグリーンツーリズムをする観光客を受け入れることを奨励し、カラオケのような享楽設備で釣ったりせず、8ベッドルームまでの民宿なら、いくら収益を上げても無税にしていました。 中米のコスタリカは平和憲法を持つ数少ない国家の1つですが、それを観光立国として栄える上で生かしているようです。軍備への支出をせずに済ませることで、そうした経費を観光客が安心して旅行出来るように生かしています。コスタリカ政府は医療を無償にしていますが、海外からの旅行者が発病しても怪我をしても国がその医療費を全額負担しています。 |
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