新しい切り口

 

 新しい切り口。妻は民族衣装をまとい続けている少数民族をテーマにした人形創りに手を出しました。それは自分の願いと、好みと、期待に沿わせるためであったようです。

 期待とは、長男である私は年老いた両親の面倒をみたり、庭の守ったりをすることを願いましたが、その私の期待です。好みとは、幼児期から服飾デザイナーを夢見てきた自分の好みです。願いとは、女性が自活力を身に付けることであり、美しい環境を守ることであり、個性的なオリジナルの生き方が出来るようにすることであり、同じ想いの人と仲良くなることであったようです。こうした願いや、好みや、期待を満たさせる道として人形作りに手を出したようです。

 民族衣装を守り続けている少数民族は、押しなべて女性が働き者です。都市から隔離された立地で、環境破壊には組せずに、自然の恵みを大切に守ったり生かしたりし続けることでひっそりと生きています。衣食住のすべてを自分たちの手で作り出し、そこに創造の悦びを見出している、と見てよいでしょう。すべてがオリジナルの世界です。中でも、武器を持ちたがらない民族を選び、大切にしているようです。

 新しい観光産業は、悦びや幸せ、安らぎや誇りなどをお裾分けするところに価値を見出すべきだと思います。訪ねてもらえた人たちに、生きる希望や勇気、生きる知恵やヒント、生きる術や技などを手に入れてもらい、一刻も早くそれぞれの生活空間に帰って実践したいと思いたったり、二度三度と来訪を重ねてお互いを高めあいたいと願ってもらったりするところに価値を見出したいものです。

 少なくともアイトワではそうしたことを夢見て1986年の春から門扉を開いています。逆に、享楽型の時間つぶしを願う人には面白くも楽しくもないでしょう。