京都市内に出る機会

 

 金曜日の午後に、その知人を伴って訪ねてくれた関東の友から、土曜日の昼前に電話がありました。無事に帰宅したとの連絡かと思ったら、「今、新幹線の中」だ、と驚かせるのです。実は前日、京都市内で働いている私の知人を唐突に訪ねて「会いたい」といっていたのですが、会いそびれていました。「やはり会っておきたかった」というわけです。

 せっかく市内に出る機会が出来たのだから、と私はカメラを持参して出かけました。祇園祭りの宵々山の日でしたから「山鉾を見てくるよ」と妻に言い残して家を出たのです。だが、その友は、念願の人と出くわすようなかたちで再会したかと思うと、10分ほど立ち話をしただけで「すぐに帰りたい」と言い出し、お茶も飲まずにそそくさと東京に帰ってゆきました。

 その喜びようを見て私まで嬉しくなってしまい、電車で途中まで見送ったのですが、気がつけば山鉾を遠望することすら忘れていたのです。そういえば浴衣姿の人が大勢いたなとは思いましたが、曽於時には気がつかず、かといってとってかえす気も起こらず、かくしてまた山鉾をジックリと見る機会を失ってしまいました。