ジーンズの魅力

 

 かつてジーンズの魅力を神戸新聞の「随想」で次のようにまとめたことがあります。その上に、藍染めが省エネ染色であることを知ったのです。

 9月初めに倉敷を訪ねた折に、アイトワ塾生の一人が別注のシーンズを4万円を投じてつくったのですが、衣料の偉大さを知る思いがしました。きっと彼はもう1本、追加注文をしてつくり、終生の衣服にするのではないでしょうか。

 近年の衣服は「肌の上の飾りモノ」になりがちですが、元来は刺青と併用することも多く、衣服は「肌の延長」でした。前者の衣服は変身の小道具と言ってよさそうですが、後者はその人個有の衣服であり、「アイデンティティ」の象徴であったわけです。

 たとえば、アメリカ大陸に上陸してインディアンを見た人は、一見して土着の人だとピンと来たことでしょう。その土地柄に根ざした服飾だと感じ取れるからです。インディアン同士が出くわせば「あれはナバホの男だ」とか「アパッチの女」とわかりますし、ナバホの中に入れば「あれは△△家の娘だが、結婚したんだな」と個別性まで識別できたわけです。

 かつてのわが国もそうでした。土着(縄文)人であったアイヌの人はもとより、外来(弥生)人の血を色濃く引き継いでいる私たちも、ついこの間までは「あれは結城の娘だな」とか「あれは大島のご新造だ」などと服飾から分かりうる服飾体系をつくり上げていました。今も既婚女性は振袖は身に付けないのが一般的です。衣服は元来自己同一性の象徴でした。