幾つかの建物が点在

 

 大きな門@。その一角に、元は下男部屋で、今は農具などを収納した部屋がある。収蔵品の一点は、娘が用いる漆塗りの洗面器A。他の一角にはさまざまなサイズの菊炭など燃料の収納庫Bがある。

 門の隣には蔵のような収納庫Cが続き、その入り口Dを入ると、家具や敷物や建材などが収納されていた。その中に、鶴を描いた杉戸Eもあり、桃山時代に描かれたものではないか、と思いました。今では手に入らない波板ガラスが入った建具もありました。

 玄関Fの右に勝手口Gがあり、虫小窓や囲炉裏の煙を抜く突き出し屋根G_2が見えました。勝手口の軒には消化ポンプが吊るされ、中に入ると籠が吊るされていました。玄関から左に進むと座敷G_3や茶室Hや仏間Iにいたる。その前に杉苔が生えた庭が広がっています。

 座敷の欄間Jや書院の建具などの細工KLに心惹かれました。欄間はさまざまな樹種の木材を用いて作られており、建具の刺し子細工は見事です。柱の釘隠しは七宝Mで、描かれた山の様子がことごとく異なっていました。

 裏に回ると、渡り廊下Nが2方に広がり、その先に待合Oや茶室Pなどが点在していましたが、とりわけ先々代の趣味の庵Rに目を見張りました。渡り廊下の付け根には当主がしつらえた便所があり、その杉戸Sも見事です。これは門と一緒にソバ打ちの折に紹介したように記憶します。

 祖祖父の趣味の庵は、入ってすぐの部屋にはロッキングチェアー@があり、壁面はバーに早代わりする仕掛けAです。バーを閉じれば引き手など付いていません。奥に進むともう1部屋Bあり、轆轤Cもあり、壁面には焼く前の器Dや束ねたキャンバスEがそのままの姿でした。

 この庵などをめぐりながら、私なら20回ほどのゴルフ代だと思って趣味の庵を、幾回かのスキー旅行代だと思って待合を、と私流に手造りしていた事だろうと考えました。いずれにせよ、そこにはフロー型ではなくストック型の生き方を基本にして、創造型の生き方をした人の姿が目の前に広がっていました。

 最後に、先祖代々の墓地Fに案内してもらいました。かつては屋敷内にあったようですが、今は公共道路を挟んだ向かい隣りにあります。

 

 

大きな門@

 

漆塗りの洗面器A

 

燃料の収納庫B

 

蔵のような収納庫C

 

入り口D

 

鶴を描いた杉戸E

 

勝手口G

 

煙を抜く突き出し屋根G_2

 

座敷G_3

 

茶室H

 

仏間I

 

欄間J

 

細工K

細工L

 

七宝M

 

渡り廊下N

 

待合O

茶室P

 

趣味の庵R

 

杉戸S
ロッキングチェアー@

 

バーに早代わりする仕掛けA

 

もう1部屋B

 

轆轤C

 

焼く前の器D

 

束ねたキャンバスE

 

先祖代々の墓地F