バブル問題

 

 講演者のビル・トッテンさんは、消費者に不要なものまで買わせ、大きく膨らせてきたGDPをバブルと見ていました。同感です。この点は『次の生き方』「10章潮流を読む」の「野生の猫に学ぶ」の後半で、私も次のように@指摘しています。

 この講演会を主催した「使い捨て時代を考える会」を(1973年に)立ち上げた槌田劭(たかし)さんは、著書『自立と共生』(樹心社1994)の中で、パニックという表現を用いて工業社会自体がバブルのようなものだ、と指摘していたことをこのたび知りました。

 ビル・トッテンさんは、『日本は略奪国家アメリカを捨てよ』(ビジネス社2007)の中で、ウォルマートの例も引き、このバブルが生じさせる悪循環の恐ろしさまで指摘しています。世界最大の小売業であるウォルマートが、工業社会が貧困に追い詰めたような人を雇用し、低賃金に抑えて公的補助を受けさせながら使用し、消費をさらに膨らませる役割を担わせているAと指摘し、それがさらに貧富格差を大きくするだけでなく、バブルを大きくして工業文明の破綻を早めるだけだ、と気付かせます。

 こうした指摘は、アメリカだけでなく、人類にとって大切な警告だと私には思われます。しかし、ブッシュ政権は、アメリカを愛すが故にアメリカの悪しき部分(それは工業文明の土台を揺るがす部分)を指摘することを「愛国心の表れ」と受けとめるだけの了見を持ち合わせていないと私は見て取り、次のように述べています。

 「9・11同時多発テロの折に、カーター元大統領は『多くの人々が米国人を嫌っているという事実を多くの米国人に気づかせた』と述べたが、ブッシュ大統領は『文明に対する攻撃だ』と叫んで明快に現象を捉えてみせながら、その原因を解消する努力はせずに、文明に正義を見出し、モグラたたきのようなことを始めた」(『次の生き方』「9章文明の怖さと文化の大切さ」の「文明と文化の衝突」の項で)。そしてこれまで7年間、渡米を控えてきました。

 また、私もアメリカのグローバリズムを「集金システムの敷設」とみて警戒しており、「この社会システムはお金と引き換えに多様な人の欲望を満たす仕掛けである。つまり欲望の解放を組織的・科学的に推進するセールスプロモーション策を発達させて、利益を独占的に獲得する仕掛けをアメリカは制度的に完成させたわけだ。このいわば集金システムを世界的に敷設できるようにしたところにグローバリズムの本質とそのエネルギーの源泉を見出してよいのではないか」(『次の生き方』9章「多様性を守る」の項で)と非難しています。