安倍さんをこき下ろす声

 

 インドを訪れた安倍さんは、極東裁判でインドのパル判事が下した判断を都合よく誤解していたことを顕にしました。それは、パル判事が恐れていた方向に日本の首相までが走り出していたことを天下に知らしめたわけです。それに対する非難でした。

 パル判事は、大日本帝国がアジアで犯した軍事的侵略行為を断罪しています。だからといって戦勝国が、戦後にこしらえた規定でもって大日本帝国を裁くことには異を唱え、有罪判決を無効とみて無罪だと主張したのです。そしてパル判事は、この主張が大日本帝国の侵略行為を支持するような曲解に結び付けられないように、と願っています。

 安倍さんは、このパル判事が恐れた曲解をしています。あるいは、大日本帝国がアジアで犯した軍事的侵略行為までをパル判事は「無罪」にしたかのように演出しています。もし、パル判事の意思を正しく理解して尊敬しているのであれば、そして美しい日本であることを本気で願っているのなら、やってはならないことがありますが、ことごとく反対のことをしています。

 たとえば、元防衛省長官の原爆投下に関する「しょうがない」発言のおりも、本来は瞬時にして激怒すべきところでしたが、かばおうとしていた。

 パル判事が下した極東裁判の判決を無効とする判断を尊重するなら、無効と見た判決にかわる有効な判決を求めることが急がれます。それは、日本の手で大日本帝国の侵した行為を裁き直し、世界を、とりわけアジア諸国を納得させる正式な判決を出して見せることではないでしょうか。

 そうすれば当然、アメリカの原爆投下を断罪しなければならなくなるはずです。また、唯一の被爆国として、インドの核保有にも反対し、核廃絶を迫るべきです。さもなければ、大日本帝国時代に背負った被爆同胞の理不尽な苦しみを、日本国が「しょうがない」と容認したようなことになってしまいます。それが安倍さんの言う美しい国でしょうか。

 もちろんそのような主張をしようと思えば、日本は率先して、世界の平和維持のために貢献しなければなりません。そのときに有効となるのが憲法9条の堅持ではないでしょうか。それを安倍さんは変えようとしています。