感謝の言葉

 

 母は大腸がんで死ぬ2年も前に、つまりまだ発病する前に、遺言をしたためていました。その頃のわたしたちは、親子で言い争うこともありました。妻は、母が発病するまで、お彼岸のボタモチやオハギ造りとかおせち料理の黒豆炊きなどだけでなく、毎朝の味噌汁の用意と炊飯を母に受け持たせていました。だから母はご機嫌斜めのときに「飯炊き婆じゃあるまいし」と毒づいていたものです。その頃にしたためていたことになりますが、「口に出していえないほど気をつけて大切にしてくれましたから長生きができたのだと感謝しています」と結んでいました。遺産相続などについては、口頭で聞いていたとおりでしたが、便箋4枚の最後に、3行のねぎらいの言葉が付け加えてくれていたのです。やはり「分かってくれていたのだ」との気分にされました。