この夏の雲南旅行の印象記

 

 このハニ族の姉妹は、こうして並んで写真に収まるまでに半時間を要しています。

 この家に招き入れられた時に、あらかたの人が上の娘に目をとめました。気が付くと下の娘の姿が見えなくなっていました。しばらくして下の娘が現れましたが、民族衣装のズボンに替えてスカートをはき、草履から赤いハイヒールに履きかえていました。

 家族との歓談が終わり、写真を撮り始めたのですが、おじいチャンの側にいた上の娘はすぐに被写体にされました。下の娘は部屋の片隅にいたおばあチャンの横でたち、その様子をじっと眺めていました。それに気付いた私は、下の娘にも写真に収まるように勧めたのですが、むずかって動こうとはしませんでした。

 ついにおばあチャンが動き、下の娘を姉の側に連れてきました。かくしてやっと2人が揃ったのですが、下の娘にも加わるように勧めてからでも10数分は経過していました。

 私は、ハニ族の民族衣装の特色(約束事?不文律?)に関心があって、下の娘にも写真に収まってもらいたかったのですが、それだけではいけなかったようです。

 同行した友が、ポラロイドカメラを取り出して2度にわたって撮影し、それぞれに写真をわたしました。何年ぶりかで用いたカメラのようで、印画紙が風邪をひいており、寝ぼけたような写真でした。しかし友は重ねて撮影し、妹にもわたしました。そのときに示した下の娘の表情を見たときに、私は人間の尊さの一端を見たような気にされました。

 同時に、その尊い部分をゆがめて助長されたときの惨めさも連想しました。この下の娘も、その第一歩を踏み出しているのかもしれません。この下の娘のスカートとハイヒールを買い求めるために、お母さんかおばあチャンのいずれかは1週間とか10日に近い労働を要したことでしょう。それほどの日時をかけた手作りの代物を数百円で売りわたし、そのお金で機械で大量生産された欧米風の代物を買い求めています。