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アイトワ循環図
春たけなわ  08/03/23

 週初めの好天は、サクランボがなる桜の花をほころばせ、庭に出る私の服装を夏装束にかえました。防寒ジャケットをぬぎ、防寒ズボンから綿パンに、長靴から地下足袋にかえたわけです。月曜日の好天は、サンシユを1日で7分咲きにしました。火曜日も好天がつづき、ミツマタとジンチョウゲをほころばせ、白梅を満開にしました。この好天のもとに、樹木に詳しい友を迎え、白梅の下で歓談したあと、柑橘類から大きな寒冷紗をはずし、たたむ作業を手伝ってもらいました。

 この連日の好天で、藤が次々と種をはじけ飛ばしました。畑で草抜きに精を出しましたが、幾度となく藤が茂る小倉池の裏山に目をやっています。藤の種がはじける音が、山火事の初期か、焚き火がたてる木が燃えるときのパチパチという音に似ているのです。「もしや、今度は山火事では」と心配になったからです。大勢の観光客が前の道を通っていましたが、誰1人としてその音に気をとめる人はいませんでした。木が燃えるときの音や山火事の怖さを知っている人なら、きっと心配になって音がする方に目をやるはずです。そんな人はいなかったのでしょう。

 火曜日の昼過ぎに妻を東京に送り出し、その夜から自炊と犬の世話が始まりました。犬の散歩と餌やりに1時間ほどかかります。ハッピーは、他の2頭の世話をしている間は常に吠えます。金太は相変わらず「ながら族」です。糞をしながらごそごそとうごき始め、終わったと思う間もなく駆け出します。ケンはとても元気になりました。2日おきに薬をチーズにくるんで与えます。

 自炊と言っても、大変なのは朝食の味噌汁ぐらいです。妻がご飯とおでんを炊き、ホウレンソウのおひたしやマグロのズケなどを作っておいてくれたからです。なぜ、味噌汁造りが大変か。それは、具に、大根またはナメコだけでなく、アゲ、豚肉、わかめ、豆腐などを入れるからです。私は高級な食材にはこだわりませんが、具の種類と組み合わせ方、そしてガスの消費量を最小にすることにはこだわります。そのための具の刻み方と入れる順番を工夫しています。

 水曜日は天気予報に感謝です。朝食後すぐに庭に飛び出し、雨が降るまでに片づけたかったことを済ませられたからです。アケビの剪定で出たクズ、コーヒーのフィルター、クヌギの小枝などを燃やして灰にし、先週束ねた薪の半分を母屋の軒先に運び上げ、残る半分に雨よけのビニールシートを被せ、雪の重みで折れた橙の枝を切り取ったときに雨が降り出しました。前日、友に促されて寒冷者を外しておいて「よかった」と思います。雨で濡らせば、乾くまで数日は遅れたことでしょう。午後はアイトワ塾の幹事を迎え、2〜3の打ち合わせをしています。

 雨の木曜日は温室での作業と原稿の推敲で過ごし、夕食と風呂は最寄りの塾生に招かれ、甘えました。2人の幼児を風呂に入れたのはよかったのですが、下の子を泣かしてしまいました。

 金曜の早朝から妻の展示会場に出かけました。昼食は商社時代の同期生にご馳走になり、酒を振る舞われ、午後は酔いが覚めるまでターシャ・チューダー展を覗きました。夕食は湯豆腐の会の仲間に、宿泊は友の新居に、と世話になりっぱなしです。翌日も、我が家の庭に上場記念樹を植えた会社の社長に昼食をごちそうになるなど、甘えっぱなしの1泊2日でした。

 その間に、大勢の仲間や知人と展示会場で旧交を温めました。とりわけ、次の本の編集者と落ち合い、写真家と装丁家に加えて、もう1人の世話になる人を紹介され、構想を固めることが出来たのが嬉しかった。私の人生にとって、常に編集者との出会いは、絶好の学びの機会でしたが、このたびはその思いをとても強く感じています。自分を振り返る機会です。なんとも楽しいことですが、その分余計に編集者に苦労を掛けているように思われてなりません。そんなわけで、妻が買い込んでくれた食材の多くが、手つかずのままで次週送りになりました。
 
日曜日に、根が大きな丸大根のようになった混血野菜を収穫しました。薹をたて始めましたから、あわててとって、皮を厚くむいて食べました。葉は少し苦み走り、根は甘みに富み、ともに煮物にして賞味しました。丸い根の直径は15cm、目方は3.5kgありました。葉も根も共にうまい野菜です。カブラと水菜が交配したのでしょうか。10日ほど早く取っておれば、もっとおいしかったことでしょう。
サンシユが、数時間の好天で7分咲きになりました。草抜きをしながら時々見上げたのですが、そのたびに、ちらほらから3分に、3分から5分に、さらには7分にと進みました。そばでは紅梅も咲いていますからとても華やかいろあいだし、高貴な香りがただよっています。
サクランボの花も開きました。昼前は3分咲きでしたが、夕刻には5分咲きまで進みました。今年はサクランボを幾つかは収穫し、賞味できることでしょう。その夜、テレビでは、日本中の桜の開花予想が早くなったと報道しました。
3日続きの好天によって、藤が次々と種をはじけ飛ばしました。パチパチと音を立て、ときには数メートルも種を飛ばします。さやがはじける力とねじれる力で飛ばすのでしょう。アイトワの喫茶店のテラスにいたる階段にも生えていますが、パチパチと賑やかなこと。
母屋の軒下に、このたびつくった風呂焚き用の薪の半分を移動させました。2束ずつ一輪車につんで、一輪車階段にそって運び上げましたが、相当きつい作業でした。20年前なら3束積んで運び上げていたかもしれません。
橙の枝が、この冬の雪の重みに絶えかねて折れました。実が24個も付いていましたから、その重みも負担になったのでしょう。妻の展示会が終われば、もう一度鍋物をしてもらい、たれに橙の果汁を用いようと思います。残りは絞って保存したく思います。
妻の個展のポスターが、ターシャ・テューダー展のポスターの隣に並んでいました。私は赤ら顔をさます意味もあって訪ねたのですが、押しかけている大勢の女性に圧倒されました。 来日中のターシャ・テューダーのお孫さんは人形作家ですが、妻の個展を覗き、ターシャへのおみやげとして人形写真集を持って帰ってもらえるそうです。