やむなく

 

 日没が迫っており、猪の進入箇所を調べて手だてを打つ時間的余裕がありませんでした。そこで、金太に見張り番をさせることを思いついたのです。

 猪や鹿が、畑や竹藪があるところと裏庭の間を移動しようとすると、必ず通る場所があります。母屋の裏側にある狭い通路です。通常は薪を風呂焚き場に運んだりするための道で、目の届きにくい寂しげなところです。

 案の定、金太は寂しがりました。植え込みに鎖を絡ませたせいもあって、何とも寂しげな声をあげました。そこで、見張り番をさせる場所を、母屋の縁側の端まで数m移動させました。そこは狭い通路から少し離れますが、見張り番の効果は十分果たせそうです。また、植え込みに鎖を絡ませずに済みそうです。

 金太と犬小屋を移動させた上で、急いで居宅に引き揚げ、渡り廊下を通って母屋に行き、縁側(写真のカーテンの隙間)から金太を労ったのです。こうしておけば、金太は私たちの側にいると錯覚し、寂しがらずに済ませそうに思ったのです。

 その後1度、金太が激しく吠え立てましたが、庭には異常がありませんでした。垣根の外側に鹿か猪でもが近づいたのかもしれません。その後、夜になると金太をこの張り番の位置に移動させて夜を過ごさせています。そのおかげでしょうか、週末の夕刻まで事なきを得ています。