深川和美さんのリサイタル

 

 歌詞がフランス語であったこともあり、ジェニーは大喜びでした。私は、ドビッシーに関して、これまで知らなかった一面を知ったことも喜びでした。これまでは女流彫刻家で、ロダンの弟子であり、助手であり、恋人であり、やがて捨てられるカミーユ・クローデルとの関係と、印象派の作曲家であったことしか知りませんでした。

 ロダンは、カミーユ・クローデルがドビッシーに近づくことを嫌ったようですが、カミーユとドビッシーが結ばれていたら、とかつて私は夢想したことさえあります。カミーユは「ワルツ」という作品を創ってドビッシーに贈り、彼は終生手放さなかったと聞いていたからです。

 深川さんによれば、ドビッシーは大変な女たらしで、奥さんの友だちであった人にも手を出し、その人や奥さんにもピストル自殺未遂を犯させたそうです。自殺未遂と聞いて、カミーユとの出会いは先であったのか後であったのか、などと少し想いを馳せました。

 とにかく楽しくて有意義な夕べでした。深川さんがエリック・サティーやドビッシーを好む理由が分かったような気になりましたし、彼女の歌唱力に改めて感心しました。ピアノの長島優子さんとの連携は見事だったし、幕間の津田兼六さん(右)もよかった。コンサルティーノとかの手風琴の操り方に引き込まれました。