私たちの身の回りを見渡せば、機械で作られた複製品で満ち溢れていますが、こうした既製品社会を生み出すシステムはアメリカで完成しています。その完成者をヘンリー・フォードと見てよいでしょう。ですから、今日の工業社会を支配している思想をフォーディズムとも呼んでいるのでしょう。
わが国でも、いまや衣服を手作りする人はまれでしょう。食べ物も、輸入冷凍餃子をはじめレトルト食品など、工場で大量生産されたものが多くを占めています。家屋も、自分で間取りを構想し、自分で建てたとまでは言わないまでも、別注で建てたという人がどれだけいるでしょうか。
ヘンリー・フォードは流れ作業によって自動車を生み出しましたが、このシステムを、リーバイストラウスは即刻ジーンズの生産に応用し、レヴィットはプレハブハウスの生産で、次いでマクドナルド兄弟はハンバーガーの生産で、と衣食住のいずれの面でもアメリカで最初に応用しています。つまり、今日の既製品社会を成り立たせる社会ステムはアメリカが生み出したのです。
複製品は、お金さえ出せば、同じものが誰にでも手に入ります。早く買うか、粗末に扱ってしばしば買い換えるか、新品に近いことを自慢するかなどの競争にすべての人を追い立て、「カネ」「金」「かね」の世界にしてしまいました。それは序の口、とどのつまりは家庭崩壊、シングル社会、孤独化、さらに資源枯渇、自然破壊や汚染、野生動植物の絶滅、ついには気候変動と進み、要は弱いものから順に皆殺しにする社会システム、緩慢なる皆殺し社会にするシステムであったわけです。
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