「身土不二」と『「想い」を売る会社』が引き合わせた友がいます。
10年前のある日、京都に「身土不二」という成句を手下げ袋に刷り込んでいる菓子屋がある、と知友が教えてくれました。ついては、その菓子屋に引き合わせてくれないか、と京都に住んでいる私は要請されました。
その週末に、ある百貨店の京都店長をしていた別の知友から、引き合わせたい人がいる、との電話がありました。なんとその人が「身土不二」を用いている菓子屋の当主でした。拙著『「想い」を売る会社』を読み、著者に会いたいと思っていただいたわけです。
先の知友は、「身土不二」の謂れを知るだけで満足しましたが、私はこの成句を用いた人自体に惹かれ、やがて親交が始まりました。仙太郎の3代目当主・田中護さん、現当主からみると先代当主です。幾度かその八木にある菓子工房にも訪れました。
仙太郎の得手の1つは餡子をもちいた菓子ですが、知り合った当初は、餡子に用いた小豆の皮を肥料や資料にして活かしていたようです。八木にある菓子工房の一角には、小豆畑などとは別に、そのための大きな温室のような建物がありました。
写真は、このたびいただいた手土産の包装一式です。小豆の皮を漉きこんだ紙を用いています。小豆の皮を紙造りにも活かせるが、高くつくことがわかったようです。しかし、会社名など宣伝広告の印刷工程を除けば、包装経費を上げずにすませられることもわかったわけです。そこで、無地の袋となり、「身土不二」という成句が手下げ袋から消えました。
この判断は、「身土不二」の精神を大切にし、製品やビジネスにその精神を反映させようとした結果が導いた選択であろうと思います。たぶん私も、逆の立場なら、そうしたかったと思います。でも自分にはできそうにないので、感心したわけです。これも理想と現実のギャップを埋めるうえで迫られた試練の1つではなかったのでしょうか。
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