有り難い病院

 かかりつけの医者に感謝しています。病院嫌いの私ですから、他の病院と比較することは出来ませんが、断言して良いことがあります。この病院はよい。

 まず、働いている人たちがのびのびしている。ぴりぴりしていない。何か間違いを犯さないだろうか、と緊張していない。個上下関係がわからないほどはきはきしている。しかし、やがてはそれが分かる。自分の役目をよくわきまえていて、その範囲を超えると、その役目を果たせる人に円滑につなぐから。個性を十分に発揮している。

 要は一人一人が全体把握をしていることがわかります。その上で、目的意識を共有している。患者と出会う頻度の多い看護婦さんが、「悪寒の後で、熱がでるのね」などと観察力に富んでいる。ですから与えられた範囲内で機敏に動き、詫びの言葉を率直に発せられる。

 痛い思いをさせるときに「ゴメンネ」と詫びるのはまだしも、たとえば血管の細い人に静脈注射を打つときに失敗しても、腕前が劣っていたことを率直に詫びる。

 何がそうさせているのだろうかと考えました。もちろんそれは、トップに立っている人がよいのでしょう。また、トップに立っている人にそのように振る舞わせる伝統も良いのでしょう。煎じ詰めれば、すべての人が共有している願いが、つまり目的意識がよいのでしょう。

 その一端をかいま見る機会にも恵まれました。病院の独自活動として、ある検査に協力を求められました。世間一般にうようよしている菌とのことですが、病院には体力が弱った人が多いので、各患者の保菌状態を調べたいとのことでした。いわゆる院内感染を予防する活動でしょう。

 これは当然の調査かもしれませんが、そのあとの会話が楽しかった。要は免疫力の大切さを語り合えました。とても得心できる意識の下に、実施されていたのです。