土の吸水や保水能力への配慮
 

 植木鉢の水やりを丁寧にするだけでも分かることですが、土の吸水能力や保水能力は意外です。乾ききった土は水をはじき、簡単には吸水しません。しかし湿った土は速やかに水を吸い込むだけでなく、驚くほどの保水能力を発揮します。

 これは目分量に過ぎませんが、乾ききった鉢の土にたっぷりと水を含ますことができたとすると、鉢の目方は3割ぐらい増えるのではないでしょうか。つまり、乾ききった土は体積の4分の1ほどの空洞部分を持っており、その部分が水で満たされる勘定です。

 大学に入学した最初の夏に、山形県の面白山にあった黄銅高山でボランティア工夫になる機会に恵まれたことがあります。そこで幾つかの失敗をしたり忘れえぬ幾つもの体験をしたりしています。その1つは、失敗がもとで山の保水能力に気付かされた思わぬ体験でした。

 冬場はスキーヤーのための宿泊施設になる建物が、夏場は黄銅高山の飯場になっていました@。雨の日も滑りやすくなった山道を登って坑道に入り、採掘しました。しかし、雨が続いた翌日は飯場にとどまることになりました。少し雨が強くなったせいだと思っていました。

 その翌日は快晴でしたが、誰も山に行こうとはしません。そのわけが分からないままに、私は山に行こうと皆を誘ったのです。無給の私が誘ったからか、「マッチャン」と呼ぶ飯場の女性が弁当の用意してくれたおかげか分かりませんが、皆で鉱山に入りました。

 「しまった」と思ったときは手遅れでした。皆がしぶしぶ腰を上げた分けがわかりました。坑道では大粒の雨が降っていたのです。山に降った雨がしみこみ、1日遅れで坑道に雨を降らせたのです。この間に山がどれだけの雨水を吸い取っていたのかは分かりませんが、坑道よりはるか下まで浸み込んでいたことは確かでしょう。

 この浸み込むペースと雨量がバランスをとっていたら、どんどん地下水が溜まる勘定です。しかし山がカラカラに乾き、そこに急に大雨が降ったら、雨水ははじかれ、表土を少しずつめくり取るようにして表面を流れ去り、地下水にはならないことでしょう。

 この体験が、今までのところは、水道水を庭の散水に用いずにすむ私なりの庭造りをさせました。