すべての仕事
 

 学生に経験してもたった6件の仕事は下記の通りです。

 クスの木の切り取り。クスの木は切り取ってもヒコバエを吹かして再生するが、切り取れば枯れる木もあることを、またクスの木は常緑で巨木になるにもかかわらず、なぜ育ててきたのかを説明しました。庭の中央部で自然生えした木ですが、コンクリート構造物を目立ちにくくする目隠しの役目を担わせました。そして、時々切り取っては再生させる方式を採用し、育て続けてきたのです。このやり方で、クヌギなどのブナ林を形成させたのが里山で、薪炭材やシイタケのホダ木としての役割を与えていたことも付け加えました。

 キンモクセイは根元から切り取らず、剪定にとどめるのは、まだ隠したいものが残っているためだ、と説明しました。しかし、うまく通じなかったようです。隠したいものを隠していた枝まですべて切り取っていたからです。わたしの説明不足が原因でしょうが、気がかりなことが生じました。「木の葉をすべて切り取っても木は生きてゆけるのか」との疑問をはさまなかったことです。近頃の学生は、とりわけこうした作業を好む学生はとても心優しいのですが、自然を疎外する時代のせいで、生き物の弱さや強さに対する配慮が欠けがちになっています。もっとも、キンモクセイは葉をすべて切り取っても芽を拭きやすい樹種ですが、この木は日当たりが悪い場所で育っているだけに少し心配です。

 土手の赤土削りは一石二鳥の作業であり、継続案件です。野小屋の使い勝手をよくしながら削り取った土で苔庭の整備をするのが狙いです。前回に引き続いて挑んでもらいましたが、手馴れてもらえたおかげか期待を超える成果を収め、半ばまで進みました。

 野小屋の周辺の平地には竹の根がむき出しになっていましたので、その切り取り作業に取り組んでもらいました。それは雨が表土を少しずつ流し去ったことが原因で、根をむき出しにしたので必要となった作業ですが、ついでに表土流失問題にまで話を広げました。また、その切り取り方のコツを会得させたくて、皆で考えてもらいましたが、2人が同時にひらめいたようです。この作業に黙々と挑んだ女子学生は「とても面白かった」との感想を残しました。

 上の2つの作業で切り取った竹の根は、干し上げてから燃料にします。

 枯れ竹の切り取り。これも継続作業です。5本の太い枯れ竹を切り取り、枝を払いおとし、既定の場所に積み上げる作業ですが、見事にこなしました。青竹の上の枯れ竹を学生が切り取りました。青竹は昨年暮れに舞鶴さんが切り倒したものです。昼食は各人持参でしたが、わたしの分は、妻がこしらえた竹の皮でくるんだおにぎりでした。そこで、竹の皮の効用も語りました。

 モミジのトンネルの落ち葉かきでは、かき取った落ち葉の一部はマルチング材とし柑橘類の木の下に、他は焚き火に放り込んで焼き芋作りに、と使わせました。そして、焼きあがったイモを食べるときに、好まれるイモの品種が時代とともに変わってきたことや、わが家の3頭の犬の中の1頭が異常なほどにサツマイモが好物だということも話しました。この日は甘みが強いナルトキントキを焼きまいた。

 オヤツは仕事を終えてから取りました。少しゆったりとした質疑の時間を楽しみたかったからです。話題が盛り上がりかけたときに囲炉裏の側に移動し、火柱が立つまで火勢を上げたものですから話題は尽きず、ついに「またこんど」と私が言うまで、つまり暗くなるまで続きました。

 別れ際に、竹の根を黙々と切り取って「とても面白かった」との感想を述べた女子学生は、私たち夫婦に小さな贈り物をくれました。初参加の人でしたが、出てきたのは手造りのチョコレートケーキでした。

 

クスの木

時々切り取って

剪定

土手の赤土削り

野小屋の使い勝手をよくし

削り取った土で苔庭の整備をする

竹の根がむき出し

その切り取り作業に取り組んでもらいました

切り取った竹の根

青竹の上の枯れ竹を学生が切り取りました

モミジのトンネルの落ち葉かき

焼きあがったイモを食べる

オヤツは仕事を終えてから取りました

私たち夫婦に小さな贈り物

手造りのチョコレートケーキ