庭宇宙
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このたびテイカカズラの種を知りました。カエデの木にテイカカズラを登らせてきましたが、ついに樹冠を覆い始めました。そこで、脚立に登って途中から切り取ったのです。その折に、切り落とした蔓を拾い集めていた妻がこの種に気付きました。風の強い日に、次の住処をもとめてこの種はふわふわと飛んで行くのでしょう。 スズメノカタビラ。中学生時代を通して、晴れの日は山羊を引き連れて2時間も3時間も、野山で草を食べさせたものですが、山羊はこの草をとても好みました。山羊のいない今では、何の役目も果たしていないようにみえる草になっています。それだけに、この1本、中央のイネ科植物を見落とし、翌年から数年にわたって計何百本もの草抜きを迫られることを恐れるのです。 おなじことがこのハコベでも言えます。鶏を飼っていた頃は、この草を餌によく用いたものですが、今は利用価値がないように思われます。庭には4種類のハコベが育っていますが、それぞれ絶やさないように茂らせる場所を与えながら、畑からは絶やそうとしています。 生物多様性ではありませんが、エコライフガーデンではさまざまな野生動物に棲み着いたり、渡りの関係で立ち寄ったりしてもらえるように願っています。それが「野菜や庭木の、ひいては私たちの元気の素」と見ているからです。つまり、野菜や庭木に、媒介を手伝わせる虫や小鳥を惹きつけようと輝かせさせたり、害虫取りを委ねようとさせたりする工夫をさせたいのです。その際にホルモンやフィトンチッドなどを駆使するに違いなく、美味しいだけでなく栄養価の高い野菜や果物にして私たちを元気にしていたことが、やがて科学的に証明されるに違いありません。 こうした好ましき連鎖反応は、豊かな食物連鎖が基盤となって生じるに違いない、と私は見ています。ですから、さまざまな野草を庭のどこかで茂らせておきたいのです。たった一種類の草、あるいは1つの科に属する草でしか繁殖できない昆虫もいるに違いありません。 問題は、そうした生物多様性に富んだ空間と、人間の快適性は常に一致するとは限らないことです。野草をことごとく取り除いたり限られた庭木に絞り込んだりした人間中心主義の庭は、虫や獣には好まれないでしょうし、逆に野生の虫や獣に好まれる庭は人間には恐れられかねません。たとえばカエルの餌になる蚊や、果樹の虫取りや花の媒介をする鉢は人間も刺します。 この人間と野生動物、あるいは野生の動物と植物の両者にとって、なんとか上手なバランスの取り方はないものか、と日々苦心してきました。 この2つの水槽は、半年前は見かけ上では同じでしたが、今は異なっています。同じ水草をいれ、同じ泉の水を張ったのですが、緑が濃い左の方には数匹のメダカと10数個の小さなタニシを棲まわせました。右の黄緑の方にはメダカやタニシを棲まわせていません。その違いが、この差異をつけました。つまり、この半年の間に、メダカやタニシを棲まわせた方で、より望ましき食物連鎖が生じたのではないか、と私は見ています。 左の水槽では、プランクトンを食べて元気に暮らすメダカの糞が、水草を元気にしながらプランクトンを増やす。そのプランクトンでメダカが元気になり、より栄養価に富んだ糞をする。エコライフガーデンでは、この水槽のメダカやタニシのような役割を人間がになえばよいわけだ、と考えています。人間が住まうことで、より他の生き物を元気にする生活空間になるように心掛ければよいわけです。エコライフガーデンとは、このようなよき食物連鎖が生じるように工夫し,振る舞わなければいけない生活空間だと私は考えています。 問題は、こうした課題に挑戦しようとすると、つい意地悪になったり矛盾を生じさせたりしかねないことです。それは微妙なバランスを求めようとするがうえで求められる努力の一種である、と言ってよさそうです。いわば住まう人の努力で、絶妙のバランスを保つ小さな宇宙のような生活空間、庭宇宙を創りだそうとする上で必定の宿命ではないでしょうか。それが、香木や薬木,あるいは栄養価に飛んだ野菜や果物を提供し、住まう人の生活を楽にするだけでなく、健康も維持させるように思われるのです。 車前草という草があります。オオバコともいいます。薬草の一種ですが、とても根が強くて抜きにくい野草でもあります。ですから庭の何処かでは茂らせておきたいのですが、アチラコチラではびこってもらいたくはありません。問題は、この草は、側を通った獣や人間に種をくっつけて移動させ、随所ではびこる戦略をとっていることです。 この戦略をとる野草が結構たくさんあります。なぜかこの戦略をとる草は、人間の目には美しく写らないのが多いようです。ですから、あちらこちらではびこらないように制御しながら、絶やさないように注意しています。そのかいがあっての話だと思うのですが、両親は共に享年93歳までボケることなく元気に過ごしてくれましたし、この庭に住まうようになって妻は病気をしていません。持病の多い私も、なんとか元気に過ごせています。 そこで、アイトワでは、多くの人にこの庭に学んでいただき、新しい豊かさや幸せを手にいれていただきたくて、巡回コースを定めて開放してきました。そして、その道からそれないように注意を呼びかけてきました。しかし、興味本位で訪ねる人や、異なる目的で訪れる人が混じるようになったようで、その注意さえ無視する人がふえるようになったのです。 そうした人の瞬間的な不注意で、数年にわたって何時間ないしは何十時間という除草の時間をしいられるなど、個人の努力では到底絶えきれなくなってきました。つまり、住まう人の心がけ次第で住人を経済的に救うはずのエコライフガーデンが、植物園や枯山水のように振舞われることによって、住まう人を窮地に追い込みかねなくなってきました。これも矛盾の1つでしょう。多くの人に見ていただきたし、かといって不用意な人には踏み込まれたくないという矛盾を抱えるようになったわけです。 他方、老化した私たち夫婦を助けながら学ぼうとする若者が現れるようになりましたし、私たちの願いにかなう見学会を開催してくださる企画が用意され、それに真摯な態度で応募する人や家族も増えました。さらに、それに勇気づけられ、エコライフガーデンとしての価値を1次元高めたくて、アイトワでは養蜂に手をだすことにたしだいです。 それはともかく、人間も自然の一部と考えて、末永く平和に暮らせる生活圏の在様を追求し、それを子どもたちに引き継ごいとする人たちが増えるに従って、やがては自殺や殺人事件などが減る世の中になるい違いない、と信じています。 |
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テイカカズラの種 |
樹冠を覆い始めました |
途中から切り取った |
切り落とした蔓を拾い集め |
スズメノカタビラ |
ハコベ |
4種類のハコベ |
2つの水槽 |
数匹のメダカと10数個の小さなタニシ | |