『そして我が祖国・日本』
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27年も前に出た本多勝一の本です。これを京都大学で副読本にしていた農村学の権威から送ってもらいました。「小繋事件」にも触れていたからです。 冒頭で、ある高齢女性の自殺を取り上げており、「正常な人間を自殺させたり衰弱死させるに最も効果的でかつ目立たぬ方法は、環境を激変させることだ」と言い切っています。 そして、経済成長政策のカラクリに気づかぬままに、あるいは気づいてもなすすべもないままに、人々が大きな事業主に食い物にされてしまう社会構造を取り上げています。その1例として、アイヌの人々にツケで酒を飲ました手法です。いつの間にか借金を貯めこませて、土地を巻きあげてしまう手法もあったようです。 小繋事件は、明治政府が「すべての土地から現金を徴収する」ことを目的にして実施した地租改正によって生じていますが、これに対して人権の面から異議を唱えた事件です。、裏返して言えば、地方の文化に沿って誠実に生きていた農民が、文明開化を唱える国家権力によって暴力的に弾圧された事件であったわけです。 もし最高裁でこの農民の主張を正当化すれば、かつてアイヌから召し上げた土地まで返さなくてはならなくなるとの判断が働いていた、と本多勝一は見ています。また、田中角栄の地元での人気をとりあげ、マッチポンプを許してきた農業社会や、それを結果的に許していた工業社会、つまり我が祖国・日本を嘆いているようです。 こうしたことが今日のさまざまな問題の根っこに横たわってままになっており、いずれわが国は立ち行かなくなりそうだ、と感じさせれれます。 本多勝一は、このままでは呼吸権まで国家に握られてしまいそうだとの不安も醸し出していますが、急いで「環境倫理と生命倫理」の両面から足元を見なおさないと大変な目に合わされてしまいそうです。 |