名前の本当のいわれ
 

 なんとも美味しかったマイタケのかやくご飯。妻に、味付けが良かったのではないかと尋ねますと、即座に首を横に振りました。「お揚げとのバランスも良かったようだけど、マイタケの」持ち味が発揮させたおいしさだ、と応えました。

 マイタケとは、舞い上がるほど美味しいからついた名称と思っていましたから得心です。市販されているマイタケの味とは雲泥の差で、「ようやく本当のマイタケにありつけた」と思ったものです。ところが、美味しいからついた名称ではなかったのです。

 キノコ博士によれば、マイタケ採りに誘った人は、すべて一度でこりてしまい、2度と付いてきた人はいないとのこと。そこにマイタケたる由縁がありました。

 熊笹や潅木が生い茂った急斜面の崖などをケモノのようになって登り、いつも昼食さえ止まってとらず、握り飯を食べながら8時間ほど歩きっぱなしで探すようです。「止まるのは排便の時だけですよ」とキノコ博士。にもかかわらず、中1日休むとまた採りに行きたくなるそうで、奥さんにいつも「あんたは病気や」といわれるとか。

 直径1mほどありそうなミズナラ、クリ、シイノキなどブナ科の木に出るようで、いつも絶望しかけているときにやっとめぐり合えるキノコだそうです。大人が3人がかりで抱えるほどの大木に、直径40〜50センチもあるマイタケが幾つも出ている光景を見たら、舞い上がりたくなるほど嬉しくなるそうです。それが命名のいわれ。

 アワビのようなコリコリ感を楽しもうとすれば、ボリュームでいえば10分の1ぐらいの時点で収穫しなければなりません。成長した本来の姿は、大人が一抱しなければならないほど大きくなるキノコだそうです。それが味も良い。

 2ついただいた小さな間に収穫したマイタケはとても贅沢な品であり、市販されることはない代物であったわけです。