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2つの方向 ニュージーランドとスエーデン 10/10/24
 
 5人の学生に助っ人で来てもらう週初めや、大垣の友人に大勢で訪ねてもらえたり妻が個展会場で人形を飾ったりする週の半ばなど、楽しくて忙しい1週間でした。また間引き大根を浅漬けにすると、白い根の部分がコリコリして美味しい季節に入りました。

 穏やかな日々がつづきますが、ここで、先週からずっと考えてきたことに触れたく思います。日本の突き進んでいる道が気がかりでならないからです。わが国は「あればあるに越したことがないモノを売ったお金で、なくてはならないモノを輸入する道」を選んでいます。ですから、円高で輸出ができないと言って嘆いたり、レアーメタルの輸入が止まりそうだと言って不安になったりしています。こんなことで良いのでしょうか。

 たった1泊2日の滞在だったのに、海詩(ミーシャ)一家が私たちの心に残した思い出はとても大きかった。海詩の神戸のおじいさんは30年来の友人です。その長女はニュ−ジーランドに、妹はスエーデンに留学し、ともにそれぞれの国の男性と結婚しました。

 ニュ−ジーランドとスエーデン。ともにわたしの憧れている国です。とはいえ、ニュ−ジーランドを訪れ始めたのは近年のことだし、まだ2回しか行っていません。しかし、兄弟のような思いで便りをもらえる現地の夫婦もできています。だからでしょうか、近年のわたしは、次第にニュ−ジーランドの方に心ひかれるようになっています。

 このたび、友人の長女・みか夫妻の一人娘・海詩は、わが家に着くなり、髪を染めなくなった妻を見て「どうしておばあちゃんになったの」と問いかけ、次いで金太のところに駆けより「小さくなったのね」と呼びかけました。そして滞在中、裸足で庭を走り回っていました。砂利道で痛そうにした海詩に、妻が「おんぶしてあげようか」と尋ねますと、「おばあちゃんだからイイ」と断わりました。その後、クリのいがを踏んで痛い思いをしていましたが、両親は裸足で通させました。この夫婦は、娘の個性の発露にはとても寛大ですが、「足るを知る」心を教え込むときはとても根気よく諭します。

 スエーデンは社会保障が充実していることで知られます。たとえば、望まぬ子どもを産んでしまった女性のために、名も告げずに引きとるシステムは有名です。また、女手一つで育てようと思えば、手厚い生活保護があります。もちろんそのために、高額所得にたいする累進税率は高い。こうしたスエーデンのありようを、現世世代の生活を平準化する方向だとすれば、ニュージーランドは未来世代との生活の平準化を志向している。

 勤労者に残業や転勤を強いて家庭に負担をかけ、自然を汚染しがちになる工業化を志向しません。製品を輸入して大切に使えば良い。逆に農業や漁業などを重視し、厳しい歯止めをかける。たとえば魚は主要な輸出産品ですから店頭での生魚はとても高い。安く手に入れたい人は自分で捕れますが、歯止めがある。採ってよいサイズを定めて厳守させたり、先住民なら50個採ってよい貝を入植人は20個に制限したりする。牧畜でも温暖化をすすめる家畜のゲップに課税する。要は、質・量共に豊かな環境を残しておけば、未来世代は独自に希望を膨らませ、進む道を切り開くに違いない、と信じているのでしょう。

 もちろん両国にも悩みは多い。スエーデンが手厚い生活保護に寄りかかろうとする人に悩みがちであれば、ニュージーランドは新たな入植者、とりわけ老子の教えである「足るを知る」心を忘れた東洋人に悩まされ始めている。それはともかく、国家としてどのような未来を切り開こうとするのか、わが国も考え直すべき時だと思います。
 
海詩を迎えるために、洗面所の花瓶にはネリネとオキダリスの花をいけ、風呂場には棕櫚の苗と観葉シダを植えた鉢を持ち込みました。その両親が、海詩の情緒をふくよかに育もうとしている、とみているからです。

海詩はまず、人形工房に押しかけ、ソフトクリームを作りました。夜は、好みのバスタオルを披露しました。そして、翌日は薪割りをする父親のドンの側に来て、「異星人だ」と叫んでいました。

海詩のために、ドンはシロアリが食った割り木のクズを並べました。海詩はこれをカセドラルと見て取ったようです。海詩はきっと父親が薪を割る音を聞きながら、庭をかけずりまわったり、人形工房で粘土遊びに興じたりしていたのでしょう。

ケムシがいても怖がりませんし、両親は怖がらせません。むしろ、海詩に見せようと、取り置きます。わたしたちが子どもであった頃に、子どもが格好の教材として虫やヘビを位置づけて学習したように、勝手に学び取れば良いこととでも心得ているのでしょうか。

この一家は、わが家やから一歩も出ずに過ごしました。その間に、ドンは薪割りで私の3日分以上の作業に、夫婦で半日はかかりそうな薪の収納にあたってもらえました。そのお礼の意味も込めて綿脚は庭掃除に時間を割き、結果として幾日か周回路を開放することができました。

海詩も怖がらなかったので、今も安泰を保っている玄関に巣食ったハチの一家。このすも巣虫に襲われたようです。

わたしを兄弟と呼んでくれるマオリ人の夫とイギリス人の妻からなる夫婦からとどいた手紙。この夫婦のお宅で、私はホームステイをしましたが、みかがその息子に日本語を教えた関係です。手前の写真の2階で私は数日過ごしました。